背景市場
中国ではオンライン求人市場が成長を続けている。
iResearchのレポートによると、中国のオンライン求人市場規模は、
2018年91.2億元(1,550億円)
2019年107億元(1,819億円)
2020年108億元(1,836億円)
2023年には147.8億元(2,512億円)に達すると予測されている。
※iResearchレポート<2021年中国網絡招聘市場発展研究報告>より抜粋
オンライン求人市場の成長に伴い、オンライン求人サービス企業への投資も活発になっている。
同レポートによると、2018年から2020年のオンライン求人サービス企業への融資総額は、
2018年:約15.5億元(263億円)
2019年:約38.5億元(654億円)
2020年:約30.2億元(513億円)
と推移している。
※iResearchレポート<2021年中国網絡招聘市場発展研究報告>より抜粋
超級簡歴WonderCVとは?
超級簡歴WonderCV(※以下 WonderCV)はZ世代(1995年以降に生まれた世代)をターゲットとした、【AIを活用した履歴書作成ツール】である。現在のユーザー数は750万人と言われている。WonderCVの創設者である朱英楠は10歳の頃からカナダのバンクーバーでの生活を始め、その後ゴールドマン・サックスなどを経て起業家へ転身。WonderCVを起業するまでに、2社の企業を立ち上げた経歴を持っている。ゴールドマン・サックス出身や起業家という輝かしい経歴を持っている朱英楠のもとには、「キャリアプラン」に関する相談が多く寄せられていた。また、Linkedinの契約ライターとしても活躍し、キャリア形成に関する分野へと進み始める。多くの人の履歴書の指導を行うなかで、彼は共通の問題があることを発見した。
それは、
1.個人のセールスポイントが書けていない。
2.自身の経歴を数値化、細分化できていない。
3.説明不足 など
そこで履歴書の指導を標準化したサービスにできないかと考え生まれたのが、WonderCVである。
※WonderCVコーポレートサイトより抜粋
企業情報
企業名:(中)北京超職科技有限公司
(英)Beijing Super Vocational Technology Co., Ltd.
ブランド名:超級簡歴WonderCV
設立:2017年6月
創設者:朱英楠
資本金:1,162万元(1億9千754万円)
従業員数:~50人
ビジネスモデル
超級簡歴WonderCVの収入源は主に3つ。
[求職者側]
①サービス利用のための課金
[採用側]
②採用情報の掲載
③掲載情報を優先的に表示させる広告費用
非上場企業なので、売上などの財務数値は公表されていないが、コーポレートサイトでは課金プラン利用者が20万人以上となっている。月額プランが19元(323円)なので単純計算すると、
月の売上は20万人✕19元=380万元(6,460万円)となり、企業側の掲載費や広告費を合わせるとそれ以上の売上規模となる。
サービス詳細
[求職者側]
課金プランは主に4種類
1.月額会員プラン:19元(323円)
2.四半期会員プラン:45元(765円)
3.年間会員プラン:79元(1,343円)
使用できる機能はともに共通となる。
①保存可能履歴書数:15
②AIによる履歴書チェック:無制限
③中国語↔英語の一括翻訳:無制限
④求職者コミュニティへの参加
これに加えてVIPプランとして
4.終身会員プラン:99元(1,683円)がある。
実際にAIが履歴書を添削を行う流れを見ていこう。
STEP1:テンプレートを選択
WonderCVには、業界、職位、専門分野などに応じて様々なテンプレートが用意されている。
※WonderCVコーポレートサイトより抜粋
STEP2:必要事項を入力後 AIによる分析を実施
AIによる分析完了後、作成した履歴書に点数がつき、各項目の記載内容に対して修正ポイントが表示される。
※WonderCVコーポレートサイトより抜粋
修正を繰り返すことで履歴書の点数が上がり、しっかりとした内容の履歴書が出来上がる仕組みとなっている。
WonderCVにはもう一つ特徴的な機能がある。それが【実際に企業で働いている人からの推薦機能】である。
この機能を使うと、応募者は企業内部の人を通じて、人事担当者や、部門の責任者に推薦してもらうことができる。WonderCVのコーポレートサイトでは、実際に現場で働いているスタッフからの推薦を使用すると、一般的な求人活動よりも採用確率が10倍も上がるとの調査結果がある。実際に現場で働いているスタッフがほしいと思う人材のほうが後のミスマッチなどが起こる確率も下がり、企業側としても効率的な採用が可能となる。
※WonderCVのアプリより抜粋
[企業側]
人材を採用する企業側もWonderCVを利用することで、より良い人材を獲得することができる。
まず1つ目の機能は上述した【企業内部スタッフからの推薦機能】。
次に特徴的な機能として【求職者の能力の可視化】がある。
企業側では求職者の能力がグラフ化され、どの分野の能力に秀でているかがひと目でわかるようになっている。また求職者の特徴が「タグ」で表示され、能力や特徴が可視化されている。
※36Krの記事より抜粋
ビジネスモデル
まとめ
中国は日本とは比べ物にならないほど人材の流動性が高い。筆者も中国で数年働いた経験があるが、数ヶ月働いてその企業に合わないと思ったスタッフはすぐに辞めていく。企業側も求めている能力に見合わないスタッフを、日本では考えられないくらいあっさり解雇する。なので、最初のマッチングが非常に大切となる。求職者側はより正確に自分の能力を伝えたい、企業側はより正確に応募者の能力を見極めたい、このような両者のニーズをWonderCVはAIの力で満たそうと挑戦している。
参考記事
※1 WonderCVコーポレートサイト
https://www.wondercv.com/
※2 艾瑞网 《2021年中国网络招聘市场发展研究报告》
http://report.iresearch.cn/report_pdf.aspx?id=3753
※3 【1/4人生赢家】这是超级简历创始人的超级简历
https://www.jiemian.com/article/1978860.html
※4 36氪首发 | 定位于挖掘95后人才的招聘产品,「超级简历」完成五百万美元A轮融资
https://36kr.com/p/1273409193536649
筆者
Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。