WHOOPとは?
WHOOPとは、休息と睡眠管理のサブスクリプションサービスと無償のウェアラブル端末を提供する会社である。
最大のミッションを「人間のパフォーマンスを引き出すこと」として掲げるこの組織は、ハーバード大学のある男性から始まった。幼い頃から運動好きだったWillは、自然とアスリートに憧れの対象を抱いて育った。中でもスカッシュ(※)にのめり込んだWillは、ハーバード大学の誘いを受け入学、同大学でスカッシュチームのキャプテンを務めることとなる。トップリーグで活躍した彼は、身体のことをあまり知らないということに気付く。トレーニングを行ってもどれだけの成果が出ているのかわからないことで、トレーニングや休息、睡眠の過不足が度々起こったのだ。それは彼自身だけでなく、周りのトップレベルのアスリートでさえも同様だった。
(※イギリス発祥のスポーツで、室内で行うテニスのようなもの。)
ここから、「人間、特にアスリートは日々のパフォーマンスを最適化することができるというシンプルな着想」を得た彼は、人間の身体を理解すべく数多くの教授と論文に出会い、人間の身体のあらゆる生理的な反応が、パフォーマンスを最適化するためのシグナルになっているという事実に出会う。ただここで問題が生じる。それらの指標を管理・モニタリングできる人がいなかったのだ。
そして彼の行動は、仲間集めへと移っていく。数学や統計に長けている者、プロトタイプやエンジニアの能力が高い者に声をかけ、WHOOPを立ち上げ独自のシステムを構築した。世界中の指折りのトップアスリートと協働したのが奏功したか、今では動画投稿サイトにいくつものレビュー動画がアップされるほどの認知度となった。
企業情報
企業名:WHOOP
創業年:2012年
創業者:Will Ahmed
創業国:アメリカ合衆国
従業員数:434人(2021年5月時点、LinkedInより)
企業URL:http://www.whoop.com/
サービスの特徴
1.休息と運動量を組み合わせた提案
まず注目したのは休息である。必要な睡眠時間、睡眠サイクルの詳細、起床時間など、個々人の休息に必要なアドバイスや洞察を得られるのだ。これらデータから導き出された回復量に基づき、適切な運動量を個々人に応じて提案する。もちろん提案だけではなく、運動内容(ハードだったのか、もっと激しくするべきだったのか)に関するフィードバックと達成度も提示してくれる。それらの記録が蓄積され、自身のパフォーマンスを適正化していくのだ。
※同社ウェブサイトより抜粋
2.結果が伴う
WHOOPは「結果志向」と表現しているが、実際のデータ収集と改善のサイクルから、以下のようなポジティブな結果が得られたという。
・心拍数からわかるスポーツ能力や回復力の指標で改善がみられた(RHR、HRVなどの指標)
・良質な睡眠(平均41分間の睡眠時間の拡大)
・ケガ率の低減(ケガの頻度が60%減少)
・アルコール摂取の低下(ベッドに行く前のアルコール摂取頻度が79%低下)
・旅の疲れの軽減(アメリカのプロスポーツは遠征移動が過酷なことから本項目が設けられていると考えられる)
ビジネスモデルと収益源
端末利用に料金は発生しないが、携帯アプリでのサービスを利用するための料金がサブスクリプション形式で発生する。1か月単位のプランから1年半単位のプランまで、以下の3つ用意されている。
・1か月プラン:30USD/月
・12か月プラン:24USD/月
・18か月プラン:18USD/月
まとめ
日本とは異なり、アメリカでは社会保険制度が充実しておらず、日々の健康管理が医療費の多寡に直結する。また、プロスポーツも盛んだ。こうした背景もあり、同社のサービスがプロフェッショナル層だけでなく一般の層にも受け入れられたのだろう。市場としても有望で、世界のフィットネストラッカー市場は2027年までに920億USDに達するという試算もある。将来性も期待大だ。
筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。