【革新】eギフトカード戦略を科学する

新型コロナウイルス感染拡大やインターネットの普及により紙製の商品券やギフト券市場が衰退していく中で、代替品となるeギフトが流行しつつある。日本でも、お祝い事などで、eギフトカードを贈る人もしばしば見られるようになった。企業においても、新規顧客獲得コストが年々上昇していることから、eギフトを活用した新しいマーケティング戦略やカスタマーサクセスを立案するチャンスが生まれている。

WeGiftは「デジタル・インセンティブ・プラットフォーム」を構築したロンドンのスタートアップ企業。2016年にAron Alexander氏によって創業されたが、きっかけは、2011年に同氏がとあるサービスの返金として郵便局で5ポンドの紙クーポンをもらったこと。なんと、紙クーポンを引き取るまでに10日間かかった。また、少額の紙クーポンであったこともあり、使い道もなかったという。

この苦い経験から、消費者が企業に対してお金を支払うインターネット決済サービスはあるのにもかかわらず、一方通行になっていることに違和感を感じ、Eギフトカードなどのデジタル貨幣を企業が消費者に支払うことができるプラットフォームを構築した。イギリスのギフトカード協会の研究によると、75%の消費者は、商品購入の際にデジタルギフトカードが魅力的なインセンティブになると発表している。

現在、世界30ヵ国、18の通貨で約700のeギフトカードを取り扱い、同社の売り上げは年間317%で成長。オープンAPIにしてインフラを提供していることから、企業が従業員の報酬、顧客へのプレゼント、またマーケティングで使用したりするなど、様々な用途で活用でき、このようなインセンティブマーケティングの需要が欧米では非常に高まっている。すでに、Vodafone、Samsung, VoucherCoders, Perkbox, Sodexoなどの大手企業も導入済み。こちらは実際のプラットフォームのUIである。

企業情報

  • 企業名:WeGift
  • 起業年:2016年
  • 創業者:Aron Alexander
  • 従業員数:50 –
  • 企業URL:https://wegift.io/

ビジネスモデル

WeGiftはクラウドベースでオープンAPIを活用する「デジタル・インセンティブ・プラットフォーム」を駆使して、3つのサービスを提供。プラットフォームの画期的な点は、リアルタイムでeギフトカードを贈ることを可能にするだけでなく、顧客分析やレポーティング機能も搭載している点だ。Profitywell(顧客セグメントの可視化プラットフォームを提供する米国企業)によると、顧客獲得コスト(CAC)は過去5年で50%以上も上昇していることから、Wegiftなどを活用したインセンティブマーケティングのような新しい手法に期待したい。

①インセンティブマーケティング
顧客の消費意欲を促すために、eギフトカードを贈る戦略。たとえば、サブスクリプションサービスの契約更新を行うと、お礼として7000円のeギフトカードを贈る仕組みにすることで、LTVを高めることができる。また、顧客が自社の商品を、別の顧客に紹介してくれたときの報酬としても活用することも可能だ。

従来、企業はeギフトカードを仕入れるために、各メーカーと値段の交渉をする必要があった。一方で、WeGiftを利用すると、Amazon、Uber、Adidas、Nikeのような大手ブランドから、約700以上のeギフトカードブランドを25%オフで購入することができるだけでなく、顧客のニーズを分析しながら、様々な種類のギフトカードを試すことが可能になる。

イギリスに本社を置く多国籍携帯電話事業会社のボーダフォンは、新商品のブロードバンドサービスのアフィリエイトマーケティング戦略としてインセンティブマーケティングを実施。過去にも別の方法でeギフトカードを活用していたが、システムの仕組み作りや企画に時間を費やしてしまい、思うように結果が出なかったと述べている。その一方で、同社はWeGiftを活用して、£100(約14,200円)相当の各ブランドのeギフトカードを顧客が選択できるキャンペーンを行ったところ、従来の戦略と比較して数十パーセント増の新規顧客を獲得できただけでなく、企画から行動に移すまでの時間が約95%も改善できたと発表している。

ボーダフォンがWeGiftを活用した理由
①あらゆるジャンルのeギフトカードを25%オフで購入できること
②未使用のeギフトカードを回収できること
③効率的にキャンペーンを開始でき、コンバージョン率が比較的高くなること

②ギフトカードプラットフォーム
世界最大のデジタルギフトカードカタログを展開。APIを活用して、自社のシステムなどと統合し、ギフトカードの注文発注管理から分析まで行うことができる。使用用途としては、社員への賞やアンケート調査などのお礼品として利用できる。

③小売店ブランディング 
小売店メーカーの売上を拡大する為のツール。従来、企業はeギフトカードの在庫をもち、ターゲット顧客に売り捌いていく。一方、APIを活用すると、オンデマンドでギフトカード作成して、さまざまな販促チャネルからマーケティングが可能。また、顧客の購買行動や履歴を分析し、リアルタイムでレポーティングを作成することができる。自社のミスにより顧客に迷惑をかけてしまったとき、お詫びとしてeギフトカードを渡す戦略もある。

同社は料金体系に関しては特に開示していないが、一般的にはeギフトカード発行社やインフラ利用企業からの手数料収入を得る場合が多い。

最後に

子供のとき、「駄菓子を買ったら、おまけで別の商品やカードがついてきた」という経験をした人は多いだろう。おまけマーケティングは昔からある手法であるが、自分にとって全く必要でない商品がついてきたときは、どうしても得した気持ちになれない。ところが、自分で好きなブランドを選択できる、eギフトカードをプレゼントされるとどうであろうか。少し嬉しい気持ちになるのではないか。