食品ロスの削減による収益アップを実現、Wastelessのダイナミックプライシング

企業情報

企業名:Wasteless

起業年:2017年

創業者:Oded Omer, Yossi Regev

従業員数:13人

創業国:イスラエル

企業URL:https://www.wasteless.com/

Wastelessとは

Wastelessは、食品スーパーなどの小売店向けに、食品の消費期限に基づく最適価格を提案するサービスを運営する企業だ。

ホテル・旅行業やEC等の業界では、需要と供給に応じて価格を変動させるダイナミックプライシングという手法がとられていることは有名だが、Wastelessはこの手法を食品小売業界の抱える大きな問題の解決に適応させた。食品廃棄物(フードロス)の削減である。具体的には、機械学習によって在庫と消費期限を管理した上で最適な小売価格を提供する仕組みを構築し、提供している。

この取り組みは単に環境に良いというだけではなく市場としても価値があるといえる。ボストンコンサルティンググループの調査によると、ダイナミックプライシングによる食料廃棄削減の分野は、世界的に見て約1,000億ユーロの可能性を秘めているという発表もあったほどだ。

社会的に大きな問題の一つである食品ロスを解決するだけでなく、大きな収益を得る可能性も秘めた同社のビジネスを、当然投資家達も注目している。2018年にはオランダのベンチャーキャピタルから約200万ドルの資金調達に成功した実績を持つ。

 

サービスの特徴・メリット

  1. 機械学習による最適な小売価格の提供

食材の消費期限はさまざまだ。ものによっては1週間単位、あるいは1日単位で管理しなければならない。Wastelessのサービスは、在庫数や消費期限から適切な小売価格を食材毎に算出し、価格を表示させるシステムを提供する。

Wasteless価格タグイメージ

出典:※同社のウェブサイト記載の写真を参考に筆者作成(https://www.wasteless.com/retailers)

2.フードロスの削減による売上や利益アップ

消費者にとって、当日消費する食品を安く買えるのは大きなメリットだ。これが購買行動に繋がり売上増、さらには食品廃棄コストも削減され利益増に繋がり、食品スーパーのビジネスに貢献する。まさに三方良しのサービスだ。

Wastelessビジネスモデル図解

収益源

食品スーパー等の小売店側から利用料金を得るケースと、サプライヤー側から利用料金を得るケースの二通りあるが、具体的な料金体系は公表されていない。

成功事例

Wastelessはウェブサイト上でいくつかの成功事例を公表している。今回はその中から抜粋し、イタリアのある食品小売の例を紹介する。

・従業員数:9,000人

・年間売上:26億ユーロ

・店舗数:140店舗

・プロジェクト期間:12週間

結果として、

食品ロス削減:39%

純利益増加率:1.2%

売上増加率:110%

を達成。同社の発表によると、同社とクライアント企業との12週間の合同プロジェクト終了後に、クライアント企業の売上データに基づき作成。

まとめ

残業帰りのスーパーで割引かれた惣菜を手に取った人も多いのではないだろうか。ただし、その割引札は従業員の手によって手作業で貼られたものだったはずだ。割引くにも人件費がかかることを考えると、小売側の負担が軽くないのも頷ける。Wastelessはそのような小売店側の負担も軽減し、売上・利益アップにも貢献。さらには社会問題解決に向けた大きな可能性も秘めている。サステナビリティが叫ばれる昨今、今後も注目すべき企業のひとつだといえるだろう。

 

筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。