インドの高等教育を変革するUnacademy

Unacademyとは?

Unacademyとは、インド発の教育系スタートアップ企業によって運営される、同国内最大のオンライン学習サービスだ。同サービスを運営するSorting Hat Technologiesの発表によると(2021年7月時点)、アクティブな学習者数は5,000万人以上、総試聴時間10時間以上、日々の授業数は2,000以上という実績を誇る。

Unacademyの歴史は、創業者の一人であるGaurav Munjalによって2010年に立ち上げられた、教育系YouTubeチャンネルから始まる。5年後の2017年には100万人以上の学習者と4万以上のオンラインクラスを有する学習プラットフォームに成長。翌年にはデイリーアクティブユーザーが20万人以上に登り、オンラインライブ学習プラットフォームとしてインド最大の規模に膨らんだ。

市場としても魅力的だ。周知の通り、2020年以降の新型コロナウイルスのパンデミック以降、インドは世界で最も深刻なダメージを受けている国のひとつだ。しかし一方で、アジア開発銀行(ADB)によると、2021年のインドの経済成長率を11.0%と予想しており、長い暗いトンネルの中に一筋の強い光が見えてきたと言える。

さらに労働力の担い手である若い人口の増加も注目すべきポイントのひとつだ。労働政策研究・研修機構が公表する統計によると、生産年齢(15歳〜64歳)人口の増加が顕著に見られ、2015年に8億5,999万人だったのが、2030年には10億3,329万人、2050年には11億4,465万人に達すると予想されている。このように、教育サービスのメインターゲットである若い層の伸びも確実視されていることから、同社の将来性も期待できる。
(参考:日本の生産年齢人口は2015年に7,696万人、2030年に6,889万人、2050年に5,505万人と大きく減少することが予想されている。)

Unacademyは世界的にも注目を集めており、Facebookやソフトバンクからの大型の資金調達に成功しているとされ、2020年までの調達学は3億5,000万ドルに達した。評価額は14億5,000万ドルに上る。

企業情報

企業名:Sorting Hat Technologies Pvt Ltd
創業年:2015年
創業者: Roman Saini, Hemesh Singh, Gaurav Munjal
創業国:インド
従業員数:5,344人(2021年7月時点、LinkedInより)
企業URL:https://unacademy.com/

サービスの特徴

1.高い専門性
 Unacademyが提供するオンライン授業の特徴は、大学入試や大学院生向けのコースが充実しており、比較的専門性や難易度の高いコースが設置されているという点だ。一例をあげると、医療系の大学院に通う学生のためのコースや、「銀行試験(国家資格のようなもの)」対策コース、その他政府系の資格試験などが用意されている。
 
2.月々払いで手の届く価格帯に
 大学入試や大学院生向けの講座は一般的に高額であることが多く、一度の出費が大きい。その点Unacademyは有料のコースを手の届きやすい価格に設定している。例えば前項で述べた「銀行試験」は、約1,300インドルピー/月(約2,000円、約17.5USドル)から提供している。
 
3.相互学習としてのプラットフォーム
 Unacademyが従来型の教育システムと大きく異なる点は、相互に質問できるという点だろう。コースの受講中に「教える側」に対して質問することができるため、疑問点をすぐに解決できる。さらには誰でも「教える側」になることができ、現在では様々な内容のコースが用意されている。

4.言語障壁を排除
 日本ではあまり知られていないかもしれないが、実はインドは他言語国家である。Unacademyはヒンディー語や英語のみならず、インド国内で使用されるその他数十言語を取扱うことで、学習の間口を広げることに成功した。

ビジネスモデルと収益源

ユーザーからの利用料で収益を得ている。無料のコースと有料のコースが用意されており、有料はコースによっては料金が異なる。

まとめ

筆者の北米での個人的な経験だが、現地でのインド系人口の多さに驚いたのを鮮明に覚えている。彼らや彼らの親世代・祖父母世代は、より良い教育を求めて北米に移住してきたという。彼らの教育への高い関心とインド人口の若さ、さらには新型コロナウイルスによるオンライン学習の普及も、Unacademyの成長を後押ししているのだろう。

 

 

筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。