家賃の分割払いシステムを提供し、家賃未納率を低減。コロナ禍でも注目のTillのサービスとは?

企業情報

企業名:Till
起業年:2017年 
創業者 : David Sullivan, Brady Nolan 
従業員数:  28人 
創業国 : アメリカ合衆国 
企業URL:https://www.hellotill.com/

Tillとアメリカの賃貸市場

Tillは、家賃の支払いスケジュールをフレキシブルなものにし、家賃滞納を防ぐサービスを提供する。

北米では、給与の支払いスケジュールが月に複数回(2週間に1回)あることが一般的である一方、家賃の納付スケジュールは月に1度であることが少なくない。家賃以外の大きな支払が生じたり、収入が減少すると、家賃を払えない可能性が高まる。そうなれば、家主・借主双方にとって当然好ましくない。

ビジネスサイトを運営するPYMNTS.comによると、アメリカの賃貸市場では約500億ドルの家賃収入があるとされている。しかしながら2020年には約3割のアメリカ人が、家賃を全額納めることが出来なかったという発表もあり、多くの家計が経済的な負担を強いられ、立ち退きのリスクにさらされている。さらには一度滞納してしまうと、延滞料を支払うリスクも抱えている(法にまつわる質問にネット上で回答するNoloというサービスによると、高くとも賃料の5%~10%)。まさに負の連鎖といえる。

サービスの特徴

Tillはこれらの問題に対し、2つの解決策を提示している。一つは、家賃のスケジュールを月1回ではなくフレキシブルに調整すること。もう一つは、借主の収入や毎月の支出をAIによって管理することで、最適な支払いを自動で行うことだ。

Till支払イメージ

※Tillのウェブサイトより抜粋(https://www.hellotill.com/)

借主側の会員登録も簡単な仕組みだ。借主が家賃と収入を登録することで、Tillは支払いスケジュールを提案し、支払い情報(銀行口座・デビットカード・クレジットカード)を登録することで、Tillが自動で各期日に支払いを済ませてくれる。

実際に同社はこのサービスを通じて以下の実績を残している。

・期日通りの家賃回収率が20~50%増加

・借主の97%が支払いに成功

・家賃の未納管理にかかる時間を70%削減

このような取り組みが注目を集め、2020年8月には800万ドルの資金調達に成功した。同年にはアメリカの14の州で170件の物件を取り扱っていると発表したが、調達した資金を元に今後のさらなる拡大を図る。

 

Tillのビジネスモデルと収益源

Tillビジネスモデル図解

借主から毎月少額の利用料を徴収する仕組みだ。借主が期日通りに家賃納付を完了した場合毎月3ドル、期日遅れの支払いの場合毎月9ドルを支払うプランが提供されている。

まとめ

同社の創業者であるSullivan氏は、借主の支払いの成功と家主の成功を同時に実現させることを掲げているが、一方で同社の収入は、既に経済的に困っている(経済的弱者ともいえる)借主側に頼るため、不安視もされている。とはいえコロナ禍で、家主も借主も困っている状況を解決する一助となっているのも事実だ。今後の拡大とさらなる収入源の確保に注目したい。

 

筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。