Tier Mobilityとは?
Tier Mobilityとは、ドイツ発のマイクロモビリティシェアリングサービス(※)を展開する会社だ(※電動キックボード、電動自転車、電動スクーターをシェアするサービス)。現在ヨーロッパと中東の12カ国95都市以上でサービスを展開している。
彼らは、「誰しもが楽しめるようなシームレスで持続可能なモビリティへの道を拓く」というビジョンを掲げている。具体的には、民間企業や公共団体と連携をとり都市交通のあり方をデザイン、誰もが使える安価なモビリティサービスを提供していくということだ。モビリティサービスという環境問題に近しい産業ということもあり、彼ら自身も環境に配慮した組織として実績を残している。2020年1月には、同様のサービスを提供する企業としては初めてclimate-neutral(クライメートニュートラル、温室効果ガスの排出量が実質ゼロになった状態)を達成した。これは、同社が提供するモビリティの充電に関わる活動のみならず、生産や運送に関わる活動も含めてのものである。
市場としても魅力的だ。アメリカの市場調査会社であるMarket Research Future社によると、2025年までにマイクロモビリティの市場規模は1,500億ドルに達し、年平均成長率は13%を見込んでいるという。
世間的な注目も当然高い。2020年11月には、ソフトバンクグループが主導する投資ラウンドで2億5,000万ドルの資金調達に成功。さらに2021年6月には、ゴールドマンサックスから6,000万ドルの出資を受けたばかりだ。ゴールドマンサックスによるこれだけの規模の同分野への出資は初であり、その注目と期待の大きさがうかがえる。Tier Mobility社はこれら一連の資金を元手に、中東とヨーロッパでの充電ステーションの拡大とユーザー体験の向上を図る。
企業情報
企業名:Tier Mobility
創業年:2018年
創業者: Lawrence Leuschner, Matthias Laug, Julian Blessin
創業国:ベルリン, ドイツ
従業員数:754人(2021年6月時点、LinkedInより)
企業URL:https://www.tier.app/
サービスの特徴
1.アプリで完結
利用前にアプリをダウンロードし会員登録を済ませる必要があるが、利用時はマシンに備え付けのバーコードを読み取ることで利用開始できる仕組みだ。別途カードを持ち歩く必要が無いため手軽だ。
2.乗り捨て可能
終了時はアプリ上で完了ボタンを押すのみ。サービスの対象エリアであればどこで乗り捨てても問題ない。現時点では利用できるエリアや駐車可能なエリアが限られているが、順次拡大していく予定だ。
ビジネスモデルと収益源
電動スクーター、電動自転車、電動キックボードの利用時にユーザーから利用料を徴収することで収益を得ている。また、1回の利用料(ロック解除料)と、時間に応じた利用料の2本柱で料金プランが構成されている。また、同サービスはヨーロッパ各国と中東で展開されているため、国や地域によって料金が異なるのも特徴だ。
※同社ウェブサイトより抜粋。
まとめ
これまでのどの時代よりも、環境に対する意識は高まってきている中で、同社のモビリティシェアのサービスは期待も大きい。昨今日本でも同様のサービスが始まり、世間的な注目を集めている。一方で、その注目の高さから、利用者による事故といったネガティブな印象も受けやすい。また、国ごとに交通事情は異なるため、乗り越えなければならないハードルも国によって様々だ。世界的に見ても人口密度が高く小さい島国である日本だが、欧州や北米の事例から学べる点は大いにあるだろう。
筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。