「暗黙知」を「形式知」へ転換し新たな発見を生む”SECIモデル”

SECIモデルとは?

”SECIモデル”とは個人の技術や知識(暗黙知)を全体で共有し形式知化することで、新たな発見を生むためのプロセスを指す。個人単位で留まっている知識を組織全体で共有することで、新たな知識を生み出し経営に活かすナレッジマネジメントの理論である。

暗黙知:
・経験や勘などに基づく知識
・簡単に言語化できない知識
形式知:
・文章や計算式、図表などで説明できる知識

SECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルは4つのプロセスを継続的に循環させることで、組織が戦略的に知識を創造し、マネジメントすることを可能にする。

①共同化プロセス:暗黙知を暗黙知として伝授
②表出化プロセス:暗黙知→形式知へ変換
③結合化プロセス:形式知×形式知=新たな知の創造
④内面化プロセス:新たな知をブラッシュアップ→新たな暗黙知の蓄積

①共同化プロセス
個人の暗黙知を他者へ移転する段階。この段階の作業においては暗黙知はまだ形式知化されていない。マニュアルとして言語化されているわけではないので、他者へに対して口頭や実務を通して伝授していく形になる。
例)
一緒に取引先へ行き、商談の様子を実際にみてもらう。

②表出化プロセス
個人が持つ暗黙知を形式知に変換していくプロセス。個人の知識や技術を言語化したり、図解にして表すことで他者や組織に対して客観的、論理的に共有することができる。
例)
業務マニュアルを作成する。
知識や技術を文章・図解という形で資料に落とし込む。

③結合化プロセス
SECIモデルは暗黙知を形式知化することで、組織内で知識や技術を共有し”新たな知識などを生み出す”ことが最大の目的となる。結合化プロセスは②表出化プロセスで形式知化されたものを別の形式知と掛け合わせるプロセスになる。例えば、部署Aの従業員から共有された形式知を部署Bの形式知と組み合わせることで、部署Bが新たな知識を生み出すようなパターンが結合化プロセスである。
例)
・他部署の成功事例やノウハウを活用することで、自部署の業務効率化を図る。
・Aさんの営業ノウハウを活用して、Bさんが営業活動を改善させていく。

④内面化プロセス
結合化プロセスで生まれた新しい知識を個人が繰り返し実践する過程で、形式知を更にブラッシュアップさせる。個人の中でブラッシュアップされた技術や知識は別の暗黙知として個人に蓄積されていく。
・Aさんの営業ノウハウを活用した結果、Bさんの営業成績も向上した。
└Bさんは自身が持っている暗黙知と共有された形式知をかけ合わせ、Bさん独自の新しい暗黙知を蓄積していく。

この①~④までのプロセスを継続的に循環させることで、組織や個人の能力が継続的に向上していく。

SECIモデルにおいて重要な4つの”場”

①~④各プロセスを活発に行うためには、それに適した”場”があるとSECIモデルでは提唱している。

SECIモデルに不可欠な4つの”場”
①創発場
②対話場
③システム場
④実践場

①創発場
創発場は共同化プロセスにおいて、他者と各々の暗黙知を共有し合う場を指す。
実際に業務や作業を一緒に行うことも重要であるが、それ以外にももっとフラットなコミュニケーションを通じて知識などを共有する方法がある。
例)
ランチ会/飲み会
社内での立ち話や休憩中の会話
誰でも自由に知識を共有できるチャットグループ
社内のトップが社内を歩き回り、従業員とオープンな会話をする
社内のフリーアドレス制 など

②対話場
表出化プロセスで重要となる場を指す。ミーティングや実際にマニュアルを作成する過程で、暗黙知を形式知へ転換する。
継続的、定期的に対話する場を設けることで、創発場で共有された知識を”暗黙知の伝達”で終わらせないことが重要となる。
例)
・定期ミーティング
・社員合宿 など

③システム場
システム場は結合化プロセスの段階で用いられる場を指す。形式知同士を組み合わせる段階なので、
表出化プロセスで作られたマニュアルや資料などを共有しながら話し合える場が必要となる。
例)
・社内のマニュアル共有データベース
・office365のsharepointなどのクラウドシステム
・オンラインミーティング など

④実践場
実践場は結合化プロセスで生まれた新しい知を実践し、個人がブラッシュアップすることで新たな暗黙知を蓄積する内面化プロセスで必要な場となる。
実際に知識を繰り返し実践していくフェーズなので特定の場などはない。
例)
・取引先との商談などでの実践
・オフィスや自宅などで繰り返し覚える など

個人が暗黙知を出しやすい体制をつくる

どれだけこのプロセスを熟知し、共有のための仕組みを構築したとしても個人が暗黙知を積極的に出していく体制がなければSECIモデルは上手く稼動しない。
例えば、業績評価の目標に「年に〇回社内で経験や技術を共有する」を設定してもいいし、
より暗黙知を形式知化できた社員を表彰し、インセンティブを与えるなどの社内の仕組みを工夫することも大切である。
知識や技術を他人に知られたくないという人や、わざわざ共有するために時間を取られるのを嫌がる人もいるだろう。そこで上記のように「知識を共有することは組織だけではなく、個人にもメリットがある」と思わせより多くの新しい知を生み出す社内文化の形成が不可欠となる。

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。