夫婦2人3脚で開いた果物屋が5000店超まで拡大、香港でのIPOを計画

背景市場

今日頭条の配信アカウント[前沿智庫]の記事によると中国の果物小売市場規模の推移は下記の通り。
2019年:1兆1,860億元(22兆5,340億円)
2020年:1兆1,120億元(21兆1,280億円)
2021年:1兆2,290億元(23兆3,510億円)
2022年(予測):1兆3,280億元(25兆2,320億円)と非常に大きな市場であることがわかる。

中国は日本の約10倍の人口となるので、食品関係の市場は日本より格段に大きい。中国は日本に比べ果物の値段も比較的安い。日常的に果物を食べる習慣もあるので、果物専門の小売店などもよく目にする。今回はこのような大きな市場で成長を遂げ、香港でのIPOを目指す小売企業を紹介したい。

百果園(Pagoda)とは?

百果園(Pagoda)は、深圳百果園実業(集団)股份有限公司が運営する果物専門の小売チェーンブランドである。今日頭条の配信アカウント[電商報]の記事に創業までの経緯が綴られている。創業者で同企業のCEOである余惠勇は江西農業大学の園芸専攻を卒業後、江西農科院で食用菌の研究や開発に従事していた。わずか1年で食用菌工場の工場長になり20万元(380万円)を稼いだ。1990年代に入り余惠勇は自身で稼いだ資金を抱え、深センに行った。深センではある食品会社に就職しディストリビューションの業務を担当していた。ある時、調達のため山東省へ赴き、仕入れた中国産の紅富士(りんごの品種)を低価格で深セン向けに卸販売を行ったり、デリバリー業務や深センでの直販店を立ち上げるなどの経験を積んだ。

その経験から果物の小売チェーン店に商機を見出し、2001年妻とともに現在の企業の前身である深圳市百果園実業発展有限公司を設立した。2002年に百果園の1号店をオープン、開店初日の店舗売上が18,000元(34万2,000円)を記録したことで自身の判断は間違っていなかったと確信した。ここから百果園の快進撃が続き、2008年にはフランチャイズ形式で100店舗まで拡大した。

2022年5月2日には香港株式市場でのIPOのため目論見書を提出した。目論見書の内容によると、現在店舗数は5,351店舗、中国22の省、130を超える都市に店舗展開を行っている。また企業全体の売上は2021年時点で約102億元(1,938億円)となっている。

中国の果物小売チェーン業界では「南百果、北鮮豊、西洪九(南の百果園、北の鮮豊、西の洪九果品)」と言われ、業界御三家の一角を担っている。

★百果園(Pagoda)オフィシャルサイト

※百果園(Pagoda)オフィシャルサイトより抜粋

企業情報

企業名:(中)深圳百果園実業(集団)股份有限公司

ブランド名:百果園(Pagoda)

設立:2001年12月

創設者:余惠勇

資本金:15億元(285億円)

従業員数:3,511人

百果園(Pagoda)のビジネスモデルと収入源

百果園の主な収入源は①果物やその他食品の販売 ②チェーン店からのライセンス使用費用、加盟費用から成り立っている。①果物やその他食品の販売が売上の大部分を占めており、目論見書の内容によると2021年の売上は約99億元(1,881億円)となり売上構成比は97.1%になる。 ②チェーン店からのライセンス使用費用、加盟費用については、2021年の売上は1.6億元(30.4億円)、売上構成比は1.6%を占めている。

★百果園(Pagoda)の財務データ

※百果園(Pagoda)の目論見書より抜粋

■果物やその他食品の販売
百果園の店舗急拡大の要因の1つにフランチャイズ展開が挙げられる。フランチャイズ展開には主に2種類がある。1.百果園が自社で管理するフランチャイズ店舗、2.エリア代理店が管理するフランチャイズ店舗があり、2021年12月31日時点で自社管理のフランチャイズ店舗は4,254店舗。フランチャイズ店舗への卸販売による売上の合計は約81億元(1,539億円)となり売上の大部分を占める。自社運営の直営店は15店にとどまり、売上の大部分をフランチャイズ店への卸販売に依存している状態にある。フランチャイズ店への卸販売は売上規模は大きいが、利益はそれほど取れていない。粗利率は9.2%となり直営店の粗利率27.3%と比較すると、薄利多売なビジネスといえる。

フランチャイズ加盟の条件は主に2種類。
①加盟モデルA:フルパッケージプラン
加盟費用:3万元(57万円)
出店候補地選定サービス費:1.5万元(28.5万円)
設備費用:6.2万元(117.8万円)
情報設備費用:3万元(57万円)
店舗工事費用:10-12万元(190万~228万円)
商品代金前払い:3万元(57万円)
保証金:1万元(19万円)

②加盟モデルB:リーズナブルプラン
加盟費用:3万元(57万円)
出店候補地選定サービス費:1.5万元(28.5万円)
商品代金前払い:3万元(57万円)
保証金:1万元(19万円)

★フランチャイズ加盟条件

※百果園(Pagoda)オフィシャルサイトより抜粋

★百果園第一号店

※百果園(Pagoda)Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

  • また、現在の中国の小売市場で欠かせないECに関してもここ3年で大きく成長している。アプリ、Wechatミニプログラム、Tmall、JD、TikTokなど中国の主要プラットフォームでの販売を行い、2019年時点では売上約3,100万元(5.89億円)だったビジネスが、2021年には約3.2億元(60.8億円)と3年間で約10倍までビジネス規模を拡大させることに成功した。その他には、大手デリバリー企業と提携したデリバリーサービスも展開している。オンラインビジネスの成長要因は市場要因と外部要因に分けられる。市場要因として、ここ数年の「生鮮食品EC」の急成長が挙げられる。外部要因としては、新型コロナウイルス感染拡大によるデリバリーやECでの需要の急拡大が考えられる。

    ★百果園(Pagoda)Tmall旗艦店

    ※百果園(Pagoda)Tmall旗艦店トップページより抜粋

■商品の品質管理や格付け
百果園は厳格な品質管理を設けており、果物の糖度、鮮度、歯ごたえ、風味などを基準に商品を①招牌(高級ブランド)②A級③B級④C級の4クラスに格付けしている。顧客の多種多様なニーズに応えるために高価格帯~低価格帯の幅広い商品を揃えている。特に高級ブランド品については27のブランドの独占販売権をもっている。5,000店舗を超える店舗数は農家にとっても非常に魅力的であり、百果園へ商品を供給することで大きな売上を作ることができると同時に多くの消費者の認知を獲得することができるメリットがある。百果園は単なる小売企業ではなく、中国の果物ブランドを育成するプラットフォームとしての役割も果たしている。

★独自の基準による格付け

※百果園(Pagoda)オフィシャルサイトより抜粋

■顧客管理(CRM)
2021年時点で百果園の会員数は6,700万人を超え、そのうち有料会員は78万人。有料会員になれば、様々な特典がもらえる。顧客との関係構築に欠かせないのがWechatだ。各店舗の店長主導でWechatのチャットグループを立ち上げており、合計で約1.7万のチャットグループが存在している。チャットグループにいるフォロワー(消費者)の数は約540万人にのぼり、様々な情報をリーチさせることができる。

このWechatのチャットグループを活用したCRMだが、日本ではあまり見かけない。例えば日本で一般的に目にするのはLINEの公式アカウントだろう。これは公式アカウント側が一方的にフォロワーに対して情報配信をするスタイル。しかしWechatのチャットグループはLINEで例えると、友達数人と作るチャットグループに相当する。中国ではCRMの施策としてよくこのスタイルを採用している。日本だと見ず知らずの人が集まったチャットグループで発言などをするのは少し気が引ける印象を受けるが、中国はそんなことはない。筆者もある消費財メーカーが運営するWechatのチャットグループに調査も兼ねて入ったことがあるが、見ず知らずのフォロワーたちが自由に発言しコミュニケーションをとっておりそこでは一種のコミュニティが形成されている。

★百果園(Pagoda)のビジネス全体イメージ

※百果園(Pagoda)目論見書より抜粋

ビジネスモデル

まとめ

百果園の今後の課題は利益率の改善だろう。2021年の営業利益率は2.9%と低い水準になっている。フランチャイズ展開に注力し、中国全土に店舗を拡大できた一方フランチャイズ店への卸販売がメインの収入源になっている以上利益の大幅な改善は難しい。今後は直営店を増やしたり、ECなどのオンラインチャネルをどこまで伸ばせるかが重要になってくる。

参考記事

※江西夫妇开5000家水果店,百果园要IPO了
https://news.pedaily.cn/202205/491391.shtml
※百果園 目論見書
https://www1.hkexnews.hk/app/sehk/2022/104409/documents/sehk22050200067_c.pdf
※百果園オフィシャルサイト
https://www.pagoda.com.cn/
※想上市的百果园,给生鲜电商们上了一课
https://www.toutiao.com/article/7096315887040348707/?channel=&source=search_tab
※2022年中国水果零售市场规模及细分渠道市场规模预测分析
https://www.toutiao.com/article/7094789458863882793/?channel=&source=search_tab

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。