コスメ購入に欠かせない[試用]に特化したサービスで急成長する小売店

背景市場

iResearchのレポート[2021年中国美妆集合店行业研究报告(日訳:2021年中国総合コスメショップ業界研究レポート)]によると、中国の化粧品市場規模は、
2019年:4,260億元(7兆2,420億円)
2020年:4,303億元(7兆3,151億円)
2021年(予測):4,948億元(8兆4,116億円)
2023年(予測):5,987億元(10兆1,779億円)

★中国の化粧品市場規模

※[2021年中国美妆集合店行业研究报告(日訳:2021年中国総合コスメショップ業界研究レポート)]より抜粋

業態別に見ると[新型総合コスメショップ]に注目が集まっている。
市場規模を見ると、
2019年:19億元(323億円)
2020年:32億元(544億円)
2021年(予測):58億元(986億円)とまだ市場規模としてそれほど大きくないが、
2023年には予測ベースで129億元(2,193億円)まで急成長する市場と見られている。

★新型総合コスメショップ市場規模

※[2021年中国美妆集合店行业研究报告(日訳:2021年中国総合コスメショップ業界研究レポート)]より抜粋

同レポートでは[従来型総合コスメショップ]と[新型総合コスメショップ]の違いについても言及されおり、レポートの内容を参考に日本語で下記にまとめた。

★従来型と新型コスメショップの比較

※[2021年中国美妆集合店行业研究报告(日訳:2021年中国総合コスメショップ業界研究レポート)]を参考に筆者が作成

ONLY WRITE独写とは?

杭州独写品牌管理有限公司が運営するONLY WRITE独写(※以下ONLY WRITE)は新型総合コスメショップとして注目を集めている。直近では4,500万元(7億6,500万円)の融資獲得に成功するなど、投資家からの注目度も高い。36Kr.comの記事によると、2020年に第一号店をオープンさせ、現時点で中国の15の省に29店舗を展開している。erbun.comの記事によると、2021年内には100店舗の開店を予定し、今後3年間で500店舗まで店舗数を拡大させる計画だ。売上規模を見ると、2020年南京にオープンした店舗では10日間で300万元(5,100万円)の売上を記録。今日頭条の記事アカウント[混沌学園]の記事では100㎡規模の店舗で開店一ヶ月の売上が1,000万元(1億7,000万円)を記録した事例もあり、売上拡大を続けていることが分かる。

★店舗画像

※ONLY WRITE Weiboオフィシャルアカウントより抜粋

ONLY WRITEの創設者である周建雷はコスメショップ業界では名のしれた人物である。ONLY WRITEを立ち上げる以前、橙小橙(Xcheng)というコスメショップで実績を上げた。2013年に立ち上げた同ブランドは5年間で中国22の省で約300店舗を展開するなどコスメショップ運営において一定の成功を収めた。この成功体験をもとに新たに立ち上げたのがONLY WRITEである。

ONLY WRITEの店舗運営モデル

ONLY WRITEのメインの収入源はコスメ商材の販売である。
ECサイト・オフライン店舗どちらでも商品購入は可能だが、ONLY WRITEの最大の特徴はオフライン店舗にある。創設者の周建雷がForbesの記事で語っている内容によると、「コスメ商材はとにかく消費者に試用してもらわないと購入意欲が生まれない」と試用の重要性について言及している。ONLY WRITEの店舗の最大の特徴は”店舗内の商品はすべて試用可能”である。陳列されている商品にはすべてテスターがあり、消費者にまず商品の使用体験を提供する。商品を気に入った消費者は、棚に設定されているバーコードを読み取り商品を注文する。商品購入後、受け取りカウンターで商品を受け取り購入完了となる。21cbr.comの記事によると現在500以上のブランドと提携し、15,000以上のSKUを取り扱っており、商品ライナップも豊富だ。

★取り扱いブランド一覧


※ONLY WRITE Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

また、ONLY WRITEを一躍有名にした商品に[コスメ商品詰め合わせセット]がある。各種コスメブランドのサンプルや本品をセットにして99元(1,683円)で発売したところ、SNSなどで大きく取り上げられONLY WRITEの知名度向上につながった。セットは中身がわからない[盲盒(ブラインドボックス)]となっており、中身がわからないドキドキ感も消費者の購買意欲を刺激する理由となっている。

★ブラインドボックス

※ONLY WRITE Wechatオフィシャルアカウントより抜粋
▶ここをクリックすると動画を見ることができます

中国では最近[盲盒(ブラインドボックス)]という商品形態が人気を集めている。元々はフィギュアメーカーが販売を始めた形態だが、今では業界を問わず[盲盒(ブラインドボックス)]が流行している。日本でいうとお菓子のおまけやガチャガチャを想像すると分かりやすい。

消費者に対して[商品の使用体験]を提供することが、コスメ商材の購入意欲を高めることに大きく貢献することは店舗の売上成長などを見ても分かるだろう。従来のコスメショップのようなBA(ビューティーアドバイザー)の過剰な商品推薦もないため、自由に商品を試して自分が本当に良いと思った商品が購入できる形態もZ世代の若者層から支持される理由と考えられる。BAを採用しないことで人件費の削減につながり、店舗の利益に対してもメリットがでる。

また、新型総合コスメショップの特徴に[デジタル化運用]が挙げられるが、ONLY WRITEもビッグデータの活用などに積極的に取り組んでいる。36Kr.comの記事によると、ONLY WRITEの自社SNSアカウントなどに70万人の会員を抱えており、全体売上の15%が会員で構成されている。店舗で商品を購入するためにはまずWechatの公式アカウントをフォローする必要がある。次にバーコードを読み取ることで決済を行うので、顧客データの収集が可能になる。顧客の購入頻度や購入カテゴリなどのデータを細かく分析することで、オンライン上で顧客一人一人に最適な情報やサービスの提供が可能となり、オフライン店舗で購入後もオンライン店舗でのリピート購入などにつなげる導線が引かれている。

企業情報

企業名:(中)杭州独写品牌管理有限公司

ブランド名:ONLY WRITE独写

設立:2019年9月

創設者:周建雷

資本金:500万元(8,500万円)

従業員数:非公開

ビジネスモデル

まとめ

Z世代の特徴として「みんなが使っているナショナルブランドよりも、本当に自分にあった商品がほしい」というニーズがある。またインターネットやSNSの発達により、Z世代の情報収集能力は極めて高い。商品の知識も豊富で、自身で判断する能力を備えている。BAが強く商品を薦める従来のコスメショップのような形態をZ世代は少し煩わしいと感じているのかもしれない。新型総合コスメショップのように、”消費者が自身で判断して購入する”ことができる店舗形態が今後の主流になっていくと考えられる。

参考記事

※12021年中国美妆集合店行业研究报告
https://report.iresearch.cn/report_pdf.aspx?id=3850&utm
※236氪首发 | 美妆零售迎来发展风口,数字化大众美妆零售连锁品牌「ONLY WRITE独写」完成4500万元A轮投资
https://36kr.com/p/1464404860029952?utm
※3天使轮融资数千万!ONLY WRITE3年要开500店
https://www.ebrun.com/20210318/425968.shtml
※4嘉御资本卫哲:市值千亿的新消费公司都在用什么打法?
https://www.toutiao.com/a7022116035780313608/?channel=&source=search_tab
※5体验式美妆店「ONLY WRITE独写」获A轮融资,锁定“95后”人群新兴需求
https://www.forbeschina.com/entrepreneur/58112
※6小样和盲盒,线下美妆找到流量新密码
http://www.21cbr.com/article/85654.html

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。