コーヒー1杯の価格で頭皮ケア、女性の悩みに応えるヘッドスパチェーン

背景市場

CBNDataが発表した《2021国民头皮健康白皮书(日訳:2021国民頭皮健康白書)》によると、調査対象の消費者のうち53%が自身の頭皮は健康ではないと答えている。頭皮状態が悪い理由としては、食生活の乱れや、不規則な生活、仕事によるストレスなどが原因であると考えており、特に90後(1990年代生まれの人)の若者の間で頭皮ケアが注目されている。同レポートではSNS上でも頭皮に関する話題が多く投稿されており、SNSの小紅書(RED)ではハッシュタグ#头皮护理秘籍(頭皮ケアの秘訣)#に関する記事の閲覧数が907.23万にものぼり関心の高さがうかがえる。頭皮ケアへのニーズが高まることで、関連市場も成長している。iiMediaのレポート《2019-2021年中国脱发保健行业趋势与消费行为数据研究报告(日訳:2019-2021年中国抜け毛保健業界動向及び消費者行動データ研究レポート)》では2019年時点で中国では約2.5億人が抜け毛に悩んでおり、そのうち約1億人が女性とされている。全体の60%が25歳から抜け毛の症状が発生していることからも分かる通り、現代の若者は「頭皮ケア」に対して強いニーズを持っている。

★調査対象者の53%が頭皮の悩みを持つ

※《2021国民头皮健康白皮书(日訳:2021国民頭皮健康白書)》より抜粋

★25歳以上から抜け毛に悩む人が増加

※《2019-2021年中国脱发保健行业趋势与消费行为数据研究报告(日訳:2019-2021年中国抜け毛保健業界動向及び消費者行動データ研究レポート)》より抜粋

Mr.JUDYとは?

Mr.JUDYは北京小悦科技有限公司が運営するヘッドスパチェーン店である。創業者である王健霖はMr.JUDYを立ち上げる以前、ヘアケア業界で15年ほどの経験を積んだ人物だ。36Kr.comの記事によると中国では女性関連消費が年々伸長しており、ヘアケア、ネイルケア、スキンケアなどの美容カテゴリ市場は消費者のニーズに合わせ細分化が進んでいる。特に女性の頭皮・髪に対するニーズは多様化しており、若者の悩みの一つである「頭皮ケア」に注目した王健霖は、女性の髪や頭皮のケアに特化したヘッドスパチェーンMr.JUDYを立ち上げた。またヘアカットやカラー、パーマなどのサービスではなくヘッドスパ専門にした理由は、カットやパーマのサービスなどに比べてサービス品質の標準化が容易であり、女性としても比較的容易に試すことができるサービスと考えたからである。サービス品質を標準化することで、比較的早くビジネスの拡大ができる点もメリットだという。

2018年から店舗展開を始めたMr.JUDYは、現在中国の一級都市を中心に約140店舗を展開している。標準店の1店舗あたりの売上は130万~150万元(2,210万~2,550万円)と言われており、店舗あたりの年間顧客数は延べ1,300~1,500人となっている。

★Mr.JUDYのロゴ


※Mr.JUDY Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

企業情報

企業名:(中)北京小悦科技有限公司

ブランド名:Mr.JUDY

設立:2016年1月

創設者:王健霖

資本金:356万元(6,052万円)

従業員数:非公開

Mr.JUDYのビジネスモデルと収入源

ヘッドスパ専門のチェーン店運営がビジネスの主軸となる。Mr.JUDYは「ヘアケア業界のスターバックス」と呼ばれており、出店地域の選定や価格などにおいてかなりスターバックスを意識している。ターゲット層も一級都市または新一級都市の社会人女性と位置づけており、出店地域もオフィス街をメインに選定している。今日頭条の記事配信アカウント[美業新維度]の記事によると、創業者の王健霖は「女性がオフィスから徒歩5分で通える店」を目指し出店場所を選んでいると語っている。「コーヒー1杯の価格で楽しめるヘッドスパ」と低価格も魅力だ。ヘッドスパの所要時間も約30分、コーヒーを1杯を楽しむ時間でヘッドスパのサービスを受けられるということで、何から何までスターバックスを意識している。

★「コーヒー一杯の値段」という低価格を売りにしている

※Mr.JUDY Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

この「30分」という時間が非常に大切である。CBNDataの《2021国民头皮健康白皮书(日訳:2021国民頭皮健康白書)》によると、調査対象者の85%が日常頭皮ケアに費やす時間は約15分~30分となっている。消費者が頭皮ケアに割く時間とMr.JUDYが提供するヘッドスパの時間が上手く重なっていることから、消費者としても気軽にサービスを利用しようという気持ちになるのかもしれない。

★頭皮ケアに費やす時間

※《2021国民头皮健康白皮书(日訳:2021国民頭皮健康白書)》より抜粋

店舗の内装や設備にもこだわりが見える。内装は女性が好むヘアサロンのデザインで、設備に関しても頭皮ケアで人気のあるフランスのブランド「KERASTASE」のヘアケア製品やDysonのドライヤーなど、中国の頭皮ケア市場で人気の高い製品を採用している。オフィス街に出店していることとヘッドスパはそれほど時間がかからないこともあり、店舗自体の面積はそれほど広くはない。面積は40~60㎡で、4~5人のスタッフで店舗を運営している。
店舗の収益は運営後12~18ヶ月で安定期に入るとされており、運営後6~12ヶ月の間でも税引前の利益率が30%~40%になると創業者の王健霖は語っている。

★店舗の様子
 


※Mr.JUDY Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

またフランチャイズ展開も積極的に行っており、Mr.JUDYのWechat公式アカウントの情報によると、
1.開店までの日数:20~30日
2.投資金額:40万~50万元(680万~850万円)
3.投資回収までにかかる期間:8~12ヶ月
と上記のような条件となっている。

★フランチャイズ加盟条件

※Mr.JUDY Wechatオフィシャルアカウントより抜粋

サービス詳細

ヘッドスパのコースの一例を見てみよう。
※価格は口コミサイト大衆点評を参考
1.健康頭皮洗浄コース
価格:52元(884円)
所要時間:30分

★サービス内容



※大衆点評より抜粋

2.KERASTASE頭皮ディープクレンジングコース
価格:148元(2,516円)
所要時間:45分

3.毛髪ダメージケア・集中保湿コース
価格:238元(4,046円)
所要時間:45分

ビジネスモデル

まとめ

中国では昨今「996問題」という長時間労働が社会問題化している。長時間の労働により、精神的、身体的にも問題を抱える人が増えた。ヘッドスパもそのような社会環境から生まれた悩みに上手く応えたサービスといえる。その他にも中国では睡眠関連の市場も成長しており、「課題解決型」の商品やサービスが広く消費者に受け入れられている。また、中国の消費者がシャンプーなどのヘアケア商材を購入するときによく見ているポイントは「効果効能」である。頭皮ケア商材も同じく効果効能に対して消費者は細かくチェックしている。以前のような「人気があるからとりあえず買ってみる」という購買動機から、「自分の悩みをこの商品やサービスは本当に解決してくれるのか」に応えられるかどうかが消費者に受け入れられるために一番大事なポイントとなっている。

参考記事

※1 2021国民头皮健康白皮书
https://cbndata.com/report/2729/detail?isReading=report&page=1&utm
※2 艾媒报告|2019-2021年中国脱发保健行业趋势与消费行为数据研究报告
https://www.iimedia.cn/c400/65843.html
※3 Mr.JUDY洗个头发下半年布局百家门店
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1677161907940671376&wfr=spider&for=pc
※4 独家|头皮护理市场调查:销量扩容、功能进阶、远未饱和
https://www.toutiao.com/a6989416621475463718/?channel=&source=search_tab
※5 Mr.JUDY 2周年,多边赋能,不忘初心
https://www.toutiao.com/a6858134565572051460/?channel=&source=search_tab
※6 不剪发不烫染,这家只吹风造型的店:想成为医美机构的流量奶牛
https://www.toutiao.com/a6763927059329712654/?channel=&source=search_tab
※7  用一杯咖啡的时间和价格变美丽,「洗个头发Mr. Judy」获5000万元A轮融资
https://www.36kr.com/p/1437604944723587

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。