背景市場
Equal Oceanのレポート[2020-2021家居行业年度盘点与趋势洞察(日訳:2020-21年家具インテリア業界年度調査及び趨勢洞察)]によると、中国住宅内装業界の市場規模は
2019年:4.8兆元(72兆9,300億円)
2020年:4.05兆元(68兆8,500億円)
2021年(予測):4.36兆元(72兆1,200億円)
と推移している。
★中国住宅内装業界の市場規模
※[2020-2021家居行业年度盘点与趋势洞察(日訳:2020-21年家具インテリア業界年度調査及び趨勢洞察)]より抜粋
またiiMediaのレポート[2021年中国家居产业链研究及标杆企业案例分析报告(日訳:2021年中国家具インテリア産業チェーン研究及び代表企業事例分析レポート )]によると、中国のスマート家具インテリアの市場規模は年々成長を続けている。
・2019年:1,530億元(2兆6,000億円)
・2020年:1,705億元(2兆8,985億円)
・2021年(予測):1,923億元(3兆2,691億円)
このように、住宅に関連するインテリアや家具の市場は非常に大きなものとなっている。
★中国のスマート家具インテリアの市場規模
※[2021年中国家居产业链研究及标杆企业案例分析报告(日訳:2021年中国家具インテリア産業チェーン研究及び代表企業事例分析レポート )]より抜粋
魯班到家(Lb-dJ)とは?
家具家電やインテリアを購入した後にやってくる作業といえば組み立てや取り付けである。これが非常に手間で時間がかかる。
薩科(深圳)科技有限公司が運営する魯班到家(Lb-dJ※以下Lb-dJ)は家具や家電の取り付け代行サービスを提供するオンラインプラットフォームである。家具の組み立てや家電の取り付けで苦労する消費者を助ける便利なサービスだ。Lb-dJのオフィシャルサイトの内容では、180万人の作業スタッフを抱え中国全土654の都市にサービスを展開し中国全土の98%を網羅している。サービス対象の商品カテゴリも非常に豊富であり、家具、浴槽、照明器具、スマートロック、キッチン、IoT家電など15のカテゴリに対応している。毎年50万のインテリア、家電企業と1800万戸の家庭へサービスを提供している。
qianbidao.com(铅笔道)の記事によると、創設者の鄧崴はLb-dJを立ち上げるまでに様々な業種において企業経営の経験を積んだ。まず1つ目は父親が病に倒れたことにより、経営していた人材アウトソーシングの会社を引き継いだ。その後自身で人材アウトソーシング会社を起業した。3つ目は婚約者の女性の家族が経営するウェディング関係の企業に共同経営者として加入、しかしここでは約1,000万元(1.7億円)の損を出す結果となった。成功や失敗など様々な経験をした経営者といえる。
Lb-dJの起業に至った経緯を紹介しよう。当時中国ではEC業界が急成長しており、鄧崴も自身の新居用にECサイトでトイレの便器や家具を購入した。しかし、商品が届いてから呆然とした。取り付け方がわからないのだ。
購入したEC店舗に問い合わせをしたが対応してもらえず、自身で取り付けができる人を探し2週間かかってようやく取り付けを終えることができた。この時の経験が彼の経営者としての嗅覚を刺激し、「取り付け代行サービス」は大きなポテンシャルを秘めた市場だと考えた。そこで誕生したのがLb-dJである。
ここで、中国の住宅購入の特徴を押さえておきたい。中国の住宅の大部分がマンションである。日本と大きく異るのは、建設業者と内装業者が連携していることはなく、購入時はコンクリートむき出しのスケルトンの状態でしかない点だ。マンションの購入者が別途内装業者を自身で探し内装を行う必要がある。かなりの手間や時間がかかるので、多くの作業を一括で依頼できる取り付け代行サービスへのニーズは非常に高い。
サービスが立ち上がった翌年の2016年、EC業界最大のセールである双11(ダブルイレブン)の時期には、1日での受注件数が5万件、売上は500万元(8,500万円)を達成したことで取り付け代行サービスビジネスの可能性を確かなものとした。直近の売上などは公開されていないが、36Kr.comの記事よると過去3年の受注件数の成長率は400%を超え、同業界の中では急成長かつ最大規模のプラットフォームとなっている。
★Lb-dJオフィシャルサイト
※Lb-dJオフィシャルサイトより抜粋
企業情報
企業名:(中)薩科(深圳)科技有限公司
ブランド名:魯班到家(Lb-dJ)
設立:2015年7月
創設者:鄧崴
資本金:1,000万元(1.7億円)
従業員数:非公開
収入源とビジネスモデル
Lb-dJの主な収入源は取り付け代行費用である。Lb-dJはプラットフォームの運営に注力しており、自社では取り付けスタッフの採用は行っていない。Uberや中国のDIDIのように、プラットフォームに登録しているスタッフが注文に応じて現地に向かい対応する。ユーザーがLb-dJのプラットフォームで支払った費用の一部をスタッフが収入として受け取る仕組みだ。サービス品質を一定に保つため、Lb-dJ側で体系的な研修制度を確立している。オンライン上ではライブ放送、オンライン学習コンテンツ、技術サポートなどを提供し、オフラインではトレーニング大会などを開催している。
Lb-dJのオフィシャルサイトでは、取り付けスタッフの中には月収3万元(51万円)を得る者もいると記載されている。
サービス詳細
WEBサイト、Wechatミニプログラム、スマホアプリなどでサービスを利用することができる。
例)WEBサイトでのサービス利用申し込み
1.取り付けたい商品画像や個数などを入力
2.住所などの情報を入力
3.代行費用を支払うとオーダーが完了
★サービス申し込みフロー
※Lb-dJ Wechatオフィシャルアカウントより抜粋
代行費用の価格設定には主に3種類がある。
①自動設定価格
・システムが自動で算出した価格でオーダー
②見積価格
・対応できるスタッフが自ら代行費用を見積としてユーザーに提示して、ユーザーがいくつかの見積から選択
③ユーザー設定価格
・ユーザー側が自由に価格を設定
料金が一律でない理由としては、オーダー件数が多い都市や対応スタッフが少ない都市ではスタッフの取り合いになる。また遠距離から派遣する場合、交通費などは自腹になるのでスタッフ側としては自動設定価格では割にあわないなどの状況が生まれる。少しでも早く対応してもらえるように、スタッフが好んで受けたくなるようなオーダーをユーザー側が出せる仕組みを作っている。価格の一例として、スマートロックの取り付け費用は115元(1,955円)となっている。
★スマートロックの取り付け代行価格
※JD.com Lb-dJ旗艦店より抜粋
★実際の作業の様子
※西瓜視頻より抜粋
▶ここをクリックすると動画を見ることができます
ビジネスモデル
まとめ
普段の生活の中で経験したことがビジネスを起こすきっかけになることがある。Lb-dJは「面倒だけど仕方なくやっている」などいわゆる”未充足のニーズ”に応えた結果、ビジネスを大きく成長させることができた良い事例だろう。また、スケルトンの状態で販売される中国のマンション販売の特徴とも上手くマッチした、中国ならではのビジネスといえる。
参考記事
※1艾媒咨询|2021年中国家居产业链研究及标杆企业案例分析报告
https://www.iimedia.cn/c400/79195.html
※236氪首发|大家居后市场一站式服务平台「鲁班到家」获近亿元A轮融资,由彬复资本领投
https://www.36kr.com/p/1448073582618501?utm
※3连续四次创业 他自投500万揽10万师傅上门装家居 双11单日流水500万
https://qianbidao.com/p/12977.html
※4魯班到家(Lb-dJ)オフィシャルサイト
https://www.lbdj.com/
※5八个关键词读懂2020-2021家居行业变化
http://www.jia360.com/new/162522.html
筆者
Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。