ショッピングモールに乗馬場?富裕層をターゲットにした本格乗馬クラブ

背景市場

中国国家体育総局が発表した[全国馬産業発展計画(2020—2025年)]によると、2019年における中国の馬の飼育頭数は367.1万頭、世界の飼育頭数の6%を占めており、飼育頭数では世界第5位となっている。また、馬産業チェーンの総生産総額は700億元(1兆1,900億円)となり産業規模としては非常に大きなものとなる。馬産業の中でも成長著しいのが“乗馬クラブ”のビジネスである。
馬関連雑誌<馬術>が発表したレポート、[2019年中国馬術業界発展状況調査報告]によると、
中国の乗馬クラブの数は年々増加の一途をたどり、
2016年:1,452校
2017年:1,802校
2018年:2,106校 となっている。
乗馬クラブ増加の背景には中国の国民の所得増加に伴う富裕層の増加が一因といえる。

騎楽馬術(JOY PONY)とは?

騎楽馬術(※以下JOY PONY)は、広州騎楽馬文化産業発展有限公司が運営する乗馬クラブである。これまで乗馬クラブはある程度の敷地が必要なため、一般的には郊外などに多く見られる施設だった。しかし、JOY PONYはこれまでとは全く違う場所に乗馬クラブを開校した。なんと大型ショッピングセンターの中に乗馬クラブを作ったのだ。JOY PONYは<乗馬クラブ+ショッピングモール>の新たなビジネスモデルで成長を続けている。運営元である広州騎楽馬文化産業発展有限公司は2019年4月に設立された会社だが、わずか2年余りの期間に20校ほどの乗馬クラブを開設した。2021年8月にも約1,000万元(1.7億円)の融資を獲得するなど、投資家からの注目も集めている。最近では、乗馬クラブの運営のみならず、中国馬術協会と共同で武漢に馬術専門の学校を設立するなど、中国における馬術の普及に尽力している。

★JOY PONY オフィシャルサイト

※JOY PONY オフィシャルサイトより抜粋

企業情報

企業名:(中)広州騎楽馬文化産業発展有限公司

ブランド名:JOY PONY

設立:2019年4月

創設者:李建孝

資本金:3,900万元(6億6,300万円)

従業員数:非公開

ショッピングモール内に乗馬クラブを開設

JOY PONYのビジネスモデルにおいて最大の特徴は<乗馬クラブ+ショッピングモール>である。これまで乗馬クラブには一つの大きな課題があった。それは「場所が遠くにあり通うのが大変」。JOY PONYはショッピングモール内に乗馬クラブを開設することで、この課題を解決し乗馬をより気軽に楽しめる環境を構築した。また、JOY PONYはターゲットを青少年に絞っていることにも注目したい。対象は3歳から18歳までの青少年で、家族と一緒にショッピングモールに行き、子供は乗馬、その間大人はショッピングを楽しむ。モール側としては、乗馬クラブでの消費+モール内でのショッピング消費を生み出すことができる。また、中国のショッピングモールは日本と比べ物にならないほど大きい。例えば、2021年6月に開業した深センの超大型ショッピングモール[万達広場(Wanda Plaza)]は総建築面積が30.5万平方メートルと広大な敷地に建設されている。JOY PONYはこの大型ショッピングモールの中に約1,200平方メートルの乗馬クラブを設立した。JOY PONYが設立わずか2年余りで多くのショッピングモールに進出できた理由として、副董事長の徐楊が大きな役割を果たしていると思われる。徐楊は以前前述したWandaPlazaの商務部の副総経理であった人物だ。ショッピングモール事情に精通しており、JOY PONYの<乗馬クラブ+ショッピングモール>モデル構築に一役買っていると考えられる。

★深センのWanda Plazaに開校したクラブ

※JOY PONY オフィシャルサイトより抜粋

青少年にターゲットを絞ったきめ細やかなサービス

JOY PONYのメインターゲットは3歳から18歳までの青少年。一般的な乗馬クラブや乗馬体験ができる施設は馬のサイズも非常に大きく、小さい子供が乗馬を学ぶには難しい面があった。JOY PONYでは自社で馬を保有し、子供にあったサイズの馬を準備している。またマンツーマンの指導がメインで、生徒一人に対して付きっきりの指導を行っている。学習内容は中国で最も権威のある”中国馬術協会”のものを採用しており、指導方法もオーストラリアのpony clubの指導体系を取り入れるなど、しっかりとしたカリキュラムで構成されている。乗馬スキル以外にも、厩舎での作業、馬のケア、馬関連用語の英語学習等、馬に関する様々な知識を習得することができる。

★乗馬の様子

※JOY PONY オフィシャルサイトより抜粋

JOY PONYの収益モデル

メインの収入は乗馬クラブに通う生徒からの受講費用で成り立っている。様々な受講コースがあるが、その一例を見てみよう。体験から本格的な乗馬スキルまで様々なニーズに合わせて受講コースが設定されている。
1.週末乗馬体験(1回)
価格:258元(4,386円)
※価格参考:口コミサイト大衆点評
内容:
①20分の乗馬体験
②10分のクラブ見学
③馬の餌やり
④馬との触れ合い体験

2.馬の餌やり(1回)
価格:9.9元(168円)
※価格参考:口コミサイト大衆点評

3.集団受講コース
価格:6,488元(110,296円)
※価格参考:口コミサイト大衆点評
内容:乗馬科目、馬のケア関係科目、知識科目
全10回

4.マンツーマン受講コース
価格:10,000元(170,000円)
※価格参考:口コミサイト大衆点評
内容:乗馬科目、馬のケア関係科目、知識科目
全10回

ビジネスモデル

まとめ

日本のメディアで目にする中国のビジネスニュースといえば、Alibaba、Tencent、バイトダンスなどITやEC関連のニュースが多い。また、中国では近年百貨店の閉店が相次いでおり、<オフライン店舗の時代は終わった>などと言われているが、WandaPlazaなどの大手ショッピングモールは工夫を凝らし業績を上げている。中国ではオンラインとオフラインをかけ合わせた”ニューリテール”という概念も生まれており、まだまだオフラインチャネルの活用価値は高い。JOY PONYのようにオフラインチャネルをうまく活用することで、新たなビジネスを生み出すことができる。

参考記事

※1:JOY PONYオフィシャルサイト
https://www.joypony.cn/
※2:[今日头条]深度解析 | 首个第四代万达广场,体验业态引领全新生活方式
https://www.toutiao.com/a6970591900113977895/?channel=&source=search_tab
※3:[国家体育总局]全国马产业发展规划(2020—2025年)
http://www.sport.gov.cn/n316/n340/c965073/content.html
※4:[搜狐]2019年中国马术行业发展状况调查报告
http://sports.sina.com.cn/o/e/2020-01-09/doc-iihnzahk3023422.shtml
※5:[ZAKER]完成千万级融资,骑乐马术持续打造“马术 + 品质生活”
http://www.myzaker.com/article/6107c20ab15ec0016a2b7c74

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。