ストーリー
The World Bankの統計データによれば、2020年時点での世界の労働人口は約34億人。世界の派遣労働者の市場規模は2019年から2025年まで年平均成長率で6.5%ずつ伸びるといわれており、2018年には$436.42 Billion(約48兆円)まで達している。世界では、日本のような終身雇用形態は衰退してきており、転職市場の流動性が高まり、プロジェクトベースで仕事をする人が増加している。
一方で、近い将来ロボットが人間の仕事を奪うのではないかという懸念は根強くある。人間よりも素早く正確に行動するロボットに、単純作業は全て置き換わるだろう。「自分の仕事もなくなるのではないか」と不安を抱く人も少なくない。将来、「如何に効率よく自分に適した仕事」を見つけ、公私ともに、人生を楽しむことができるかがポイントになる。
孫正義氏が率いるソフトバンクビジョンファンド2が、2021年3月にスペインのHRテック企業「Jobandtalent」に投資を実施した。Jobandtalentは2009年にスペインで設立された人材派遣のデジタルプラットフォーマーだ。創業以来、$290 million (約310億円)以上の資金調達を行う。世界の主要都市(イギリス、スペイン、メキシコ、コロンビアなど)で1000万人の登録者と15万以上の企業求人案件を管理して、リアルタイムで求職者と雇用者を繋げるジョブマッチングプラットフォームを展開する。
雇用に縛られることなく、好きな時に、好きな仕事を選んで働くWaaS(workforce as a service) 文化を醸成させることが狙いだ。Jobandtalentは、AIが言語解析を行い、求職者に適した仕事を自動で提供する。雇用コストの増大や労働者管理に悩まされる企業と正規雇用のような待遇を受けれずに、常に雇用の不安を抱えている派遣労働者の悩みを解決するHRテック企業だ。
売り上げは2016年€5 million(約6億5千万円)から2020年€500 million(約650億円)まで成長し、EBITDAは黒字に転換している。
会社概要
企業名:Jobandtalent
起業年:2009年
創業者 :Juan Urdiales and Felipe Navio
従業員数:750 –
企業URL:https://www.jobandtalent.com/
ビジネスモデル
Jobandtalentによれば、全世界で約5億人の派遣労働者がいると言われている。海外でいう派遣労働者、いわゆるテンポラリーワーカーは、派遣会社を通して、会社と契約を結び、一時的に仕事をするプロジェクト型人材だ。Jobandtalentは特に、ブルーカラーワーカーに特化してサービスを行う。
※同社資料より抜粋
サービスの特徴
①モバイルアプリでの一括管理
派遣労働者とのやり取りの工程がすべてモバイルアプリで完結する。求職者登録→求職者経歴チェック•スコアリング→面接→契約書手続き→求職者への給与計算、労働時間管理、給与支払いなど。また提携先の企業が100人以上を雇用した場合、スケジュールやパフォーマンス管理などを可能にするCRMツールを企業に提供する。
※同社資料より抜粋
②マッチングテクノロジー
Jobandtalentが提供するモバイルアプリに登録する約100,000人の求職者と850以上の提携会社の求人をマッチングする。特徴は、求職者に対してWQS(Worker Quality Score)を付与することだ。WQSは求職者の離職率、欠勤率、仕事のパフォーマンスなどあらゆる情報がスコアリングされた信用スコアだ。昨今、欧州では個人情報の取り扱い方が問題化しているが、同社はWQSを改善する支援も求職者に行う。
前述したように全てのサービスをアプリで完結させるため、膨大なデータを動かさなければならない。そこで、同社は2019年時点では、AWS(アマゾンウェブサービス)にプラットフォームを構え、Amazon RedshitとAmazon Database Migration Serviceを活用して、データ管理を実施。
③求職者への手厚いサポート
同社は、派遣労働者に対しても、正規雇用者と同等の雇用形態を提供することを目標に掲げている。年金制度、休暇制度、健康保険、あらゆる職業スキルアップトレーニングなど充実したサポートを用意。
ビジネスモデル
同社のマネタイズ方法は以下の4つである。
従来の広告ビジネスに加えて、キャリアアップの為のトレーニング機会や学校紹介でも課金をしていることがユニークである。
最後に
国によって労働者派遣法が異なるが、Jobandtalentのように派遣社員にも正規雇用と同じような扱いを提供できるようになり、アプリ一つで自分の居場所をつくれる日がくれば、日本の労働市場がより活性化するのではないか。
著者
小松彰洋。Business Earth管理人。大学卒業後、外資系IT企業で営業やマネジャー職を経て、現在はIT関連の経営コンサルティングやソフトウェアセールス領域で活動中。