背景市場
iiMediaが発表した[2021年中国寵物経済産業研究報告(日訳:2021年中国ペット経済産業研究レポート)]によると、中国のペット関連市場規模は下記のように成長している。
2020年:2,953億元(5兆3,154億円)
2021年(予測):3,942億元(7兆956億円)
2022年(予測):4,936億元(8兆8,848億円)
2023年(予測):5,928億元(10億6,704億円)
★中国ペット関連市場規模
※[2021年中国寵物経済産業研究報告(日訳:2021年中国ペット経済産業研究レポート)]より抜粋
また同レポートによると消費者のペット関連商材の購買チャネルは
オフライン店舗:71%
ECサイト:67.1%
となっており、以前オフライン店舗が1位のチャネルとなっているが、ECサイトがそれに迫る勢いを見せている。
★消費者の購買チャネル
※[2021年中国寵物経済産業研究報告(日訳:2021年中国ペット経済産業研究レポート)]より抜粋
iFreePetとは?
iFreePetは怡然自得(北京)科技有限公司が運営するペット販売ブランドである。創業者の唐宗堯は自身も幼い頃から犬を飼っていた。犬とともに暮らすなかで、犬は自分に非常に大きな価値をもたらしてくれることを身をもって感じていた。父親となった唐宗堯は、娘が6歳の頃にゴールデンレトリバーの幼犬をプレゼントした。ペットショップでは活き活きとしていた犬が家に連れて帰った二日目に体調を崩した。唐宗堯はペットショップのオーナーと治療方法などについて相談し、ペットショップに持ち帰り治療することを希望した。しかしペットショップのオーナーの口からは次のような言葉が出た。「ペット業界というのはこういうものだ。売ってしまえばもう責任はない」、オーナーの対応に唐宗堯は愕然とした。病院での治療を行ったが、結局幼犬の命を救うことはできなかった。この経験が後にiFreePetを立ち上げる際、サービスのあり方などに大きな影響を与えることになる。
唐宗堯はiFreePetを立ち上げる以前、大手ECサイトの京東(JD.com)や検索エンジンの百度、配車サービスアプリのDiDi、テック企業のXiaomiなどインターネット関連業界で約15年の経験を積んだ。インターネットの発展に伴いペットなども従来のオフライン店舗での販売に加えてECサイトでの市場も急成長を遂げていた。動物以外にもそこから派生したペット食品やペット関連商品などのペット市場全体が注目を集めていた。
唐宗堯はペット業界について調査を進める中でいくつかの課題を発見した。課題は大きく2つに分けられる、1つ目は信用、2つ目は価格だ。ペットを購入する際に消費者が一番気にかけるのはやはり信用だろう。しかし彼自身も体験した”アフターサービスの欠如”が業界の大きな課題だった。「販売したら終わり」という命ある動物を扱うものとしてあるまじき態度で販売を行う業者が一定いるという事実。また、ペットが上流の繁殖領域から下流の小売領域に引き渡され最終的に消費者の手に届くまでに多くの業者を通して取引を行うため、動物の価格はどうしても高くなってしまう。また”血統証”つきの動物などであれば庶民にはとても手の届かない価格になってしまう。信用と価格、この2点を切り口に2018年に誕生したのがiFreePetである。現在北京を中心に展開している実店舗のペットショップやECサイトなどのB2Cビジネスから動物の卸販売などのB2Bビジネスを行っている。企業全体の売上については公開されていない。
★iFreePetオフィシャルサイト
※iFreePetオフィシャルサイトより抜粋
企業情報
企業名:(中)怡然自得(北京)科技有限公司
ブランド名:iFreePet
設立:2018年7月
創設者:唐宗堯
資本金:100万元(1,800万円)
iFreePetのビジネスモデル
iFreePetのメイン事業の柱は3つ。
①自社運営のペットショップ
②提携ペットショップへの卸販売
③フランチャイズ契約によるペットショップ
①自営のペットショップ
36Kr.comの記事によると2022年3月の時点で北京に5店舗を展開している。5店舗ともに黒字経営となっている。1店舗あたりの月間平均売上は6万元(108万円)超、平均客単価は5,800元(10万円)。また1店舗の年間売上が50万元(900万円)となり3ヶ月でコスト回収ができるとのこと。利益率に関しても年々改善され、2019年48%、2020年53%、2021年は74%と記載されている。ただし売上や利益のみを追求しているわけではなく、消費者が安心してペットを購入できる体制を構築している。たとえば、iFreePetのメンバーである李叶は中国林業科学院の生物学博士である。提携している繁殖拠点に対して動物の健康指導、プロセスの規範化などを行い、バイオテクノロジーを用いて動物の健康を守る努力を行っている。また消費者が一番心配している”購入後のアフターサービス”についても体制を整えている。中国のペット業界では”健康期間保証”を設定している業者が多く、一般的には七日間程度だそうだ。iFreePetは業界水準の約4倍に当たる”30日間健康保証”を提供している。仮に購入後30日以内に死亡または病気にかかった場合は全額返金対応を行う。確かに命あるものに”健康保証”を設けること自体に賛否両論はあるだろうが、業界の一般水準を大きく上回る健康管理の仕組みや、アフターサービスの体制を充実させた点においては、iFreePetが業界に与えた影響は大きいといえる。
ペットのサプライヤーについては健康度、飼育環境、購入者の満足度を基準に取引の可否を決定している。
オフライン以外にもECサイトでの販売も行っている。
②提携ペットショップへの卸販売
B2Bビジネスでは、既存のペットショップに対してペットの販売を行っている。
③フランチャイズ契約によるペットショップ
フランチャイズ条件などは公開されていないが、36Kr.comの記事によると1店舗の月間平均売上は6万元(108万円)を超え、自営店舗と同じく3ヶ月でコスト回収が可能となっている。
サービス詳細
①自社運営ショップ
猫を中心に販売を行っている。
ECサイトでは繁殖地、予防接種の日時など細かな情報が公開されている。
★iFreePet B2C向けECサイト
※iFreePet B2C向けECサイトより抜粋
★ペットの情報:細かな情報が公開されている
※iFreePet B2C向けECサイトより抜粋
②提携ペットショップへの卸販売
ECサイトなどでの卸販売を行っている。B2B向けのECサイトではiFreePetから仕入れを行うことで店舗の利益改善につながった事例が紹介されている。
iFreePet B2B向けECサイトより抜粋
ビジネスモデル
まとめ
ペット市場が成長するに従い様々な企業が市場に参入している。その中には利益のみを追求し、命ある動物を乱暴に扱ったり、動物の健康に全く責任を持たない業者がいる。また命ある動物を売買すること自体に対して賛否両論があることも事実である。しかし、動物が人に与える影響は大きい。創業者の唐宗堯は自身も動物を飼うなかで、動物が自身にもたらしてくれる価値について身をもって体験している。だからこそ彼は命あるものに対して、できる限りの責任を持ち業界の悪習を断ち切ろうと努力しているのだろう。このような企業がもっと増えることで、人と動物がともにより良く暮らしていける環境が増えることを願う。
参考記事
※iFreePetオフィシャルサイト
https://www.ifreepet.com/
※艾媒咨询|2021年中国宠物经济产业研究报告
https://www.iimedia.cn/c400/80783.html
※早期项目精选-iFreePet宠物销售平台
https://36kr.com/p/zq/1648515717600644
※iFreePet ECサイト(B2B向け)
https://www.51freepet.com/
※iFreePet ECサイト(B2C向け)
https://www.ijavacat.com/
※从源头开始保障宠物纯种和健康,「iFreePet」想做平价的宠物交易平台
https://36kr.com/p/1723013414913
※无中间商,用互联网+生物科技变革宠物行业,看iFreePet如何化解宠物交易风险
https://www.lieyunwang.com/archives/450096
※提供 30 天健康保障,为消费者对接合格繁育基地,宠物电商平台 iFreePet 让你不再买到“星期狗”
https://www.myzaker.com/article/5c427a3c77ac643cd406d452/