安いだけじゃない、宝探しのような楽しさが魅力のディスカウントショップ

背景市場

iiMedia Researchレポートによると、中国の菓子市場は
2019年:1兆556億元(17兆9,000億円)
2020年:1兆1,200億元(19兆円)
2021年(予測):1兆1,562億元(19兆6,554億円)
となり、非常に大きな市場かつ、成長を続けている市場といえる。
しかし中国では昨今食品の食べ残しや廃棄が問題となっており、2021年4月には【反食品浪費法】という食べ残し等の行為に対して罰則を設ける法律が施行された。このような世間の流れとともに、現在注目されているのが、【消費期限間近の食品】のディスカウントショップである。【消費期限間近の食品】の市場は300億元(5,100億円)と言われており市場規模も非常に大きい。市場の成長を追い風に、特にお菓子カテゴリで人気があり、若者から絶大な人気を集めるショップも誕生している。

★2010~2021年中国菓子業界規模及び予測

※iiMedia Research<2020-2021中国快銷食品行業発展現状及消費者行為洞察報告>より抜粋

好特売Hotmaxxとは?

好特売Hotmaxx(以下Hotmaxx)は上海芯果科技有限公司が運営する、賞味期限間近の菓子をメインとしたディスカウントショップである。36Krの記事によると、現在北京・上海・深センなどに約200店舗を展開している。創設者の顧暁健は元アリババの社員であり、小売店舗への商品供給などのプロジェクトに携わっていた。2014年に上海芯果科技有限公司を立ち上げ、B2Bを対象とした消費期限間近の食品の卸ビジネスを行っていた。そしてB2Bで培ったサプライチェーン等のノウハウやリソースをB2C領域に転用し生まれたのがHotmaxxである。Hotmaxxは2019年に店舗展開を開始。中国大手メディアの新京報の報道では、2020年時点で全店舗を合わせた平均日販は150万元(2,550万円)となっている。また食品メーカーと直接契約を結び、低コストで商品を仕入れることで、驚きの安さを実現している。
Hotmaxxは日本の小売店舗「ドン・キホーテ」にインスピレーションを受けたと言われており、店舗のPOPなどもどこかドン・キホーテを思わせるデザインになっている。

★Hotmaxxの店舗の様子
POPなどはドン・キホーテを思わせるデザインになっている。

※Hotmaxxオフィシャル微博より抜粋

企業情報

企業名:(中)上海芯果科技有限公司
    (英)Shanghai Xinguo Technology Co., Ltd.

ブランド名:好特売Hotmaxx

設立:2014年9月

創設者:顧暁健

資本金:598万元(1億166万円)

従業員数:200-299人

若者消費者の意識の変化

近年急激な盛り上がりを見せているディスカウントショップだが、中国では何年も前から同様の業態は存在していた。当時、消費期限間近の食品に対しては、
1.安全ではない
2.買うのが恥ずかしい など、どちらかと言うとマイナスイメージが強かった。
しかし、若者の意識の変化及びSNSの普及などがこの業態に対するイメージを変化させた。経済の発展に伴って所得は上がっているが、同時に物価の上昇や家賃の高騰などにより、生活費に使えるお金はそれほど増えていないのが現状である。特に都市部ではその状況が顕著に現れている。また、Z世代の若者といえば、生まれた時から物質的には恵まれており、高価でメンツが保たれるような商品よりも、実用的でコストパフォーマンスの良いものを好む傾向にある。彼らにとって【消費期限間近の食品】を買うことは恥ずかしくも何ともなく、むしろ賢い買い物なのである。またSNSなどで「好特卖(Hotmaxx)」と検索すると、
「〇〇がXX元で買えたよ!」とか「今日の戦利品はこれ!」など自らが購入した商品を積極的にSNS上に投稿している。【消費期限間近の食品】は彼らにとっては、単なる消費ではなく、宝探しのようなアミューズメント性も兼ね備えている。

★SNS上にはHotmaxx関連の情報が多く投稿されている。

※小紅書(RED)の投稿より抜粋

Hotmaxxの収入源

Hotmaxxの収入源は主に2つ。
1.フランチャイズ店舗への商品卸
2.フランチャイズ加盟費用
【2】の加盟費用は2021年時点では35.98万元(611万円)。
内訳としては34万元(578万円)の保証金と19,800元(33万円)。Hotmaxxの本部はサプライチェーンのみを担当し、その他店舗運営は各店舗が行う仕組みを取っている。またSearch-Coolの記事によると、店舗の売上から運営コストなどを引くとフランチャイズオーナーの利益は売上の12%ほどになる。

ディスカウント詳細

実際の商品を例にどれくらいのディスカウントが行われているのかを見てみよう。
1.カルビーポテトチップス
市場価格:約10元(170円)
ディスカウント価格:4.5元(76.5円)

2.エビアンミネラルウォーター
市場価格:約6.5元(110円)
ディスカウント価格:3.4元(57円)

など、半額で販売されている商品などもある。

ビジネスモデル

まとめ

筆者が大学で中国語を勉強し始めた当時、このようなことを習った。
「中国で食事をごちそうになったとき、残すのが礼儀です。食べきってしまうと、お腹いっぱい食べていないと思われる。」
ビジネスで会食に参加した時も、とにかく大量に注文する場面が何度もあった。しかし、そのような習慣は中国では薄れてきている。食べ残しや廃棄などの食品ロスを極力減らすために法律などが整備され、企業や消費者の意識も変化している。そのような時流に乗って、中国でのディスカウントビジネスは日に日に大きくなっている。ビジネスモデルとしては特徴的とは言えないが、人々の意識の変化が新たなビジネスの成長につながった一例といえる。

参考記事

※1艾媒咨询|2020-2021年中国快销食品行业发展现状及消费者行为洞察报告
https://www.iimedia.cn/c400/75057.html

※2「临期折扣」兴起时:好特卖和竞争对手们
https://36kr.com/p/1179996463213443

※3Hotmaxxオフィシャル微博
https://weibo.com/HotMaxx

※4只吃临期食品的年轻人,游走在美味与变质的边缘
https://www.toutiao.com/a6943527934816764423/?channel=&source=search_tab

※5 以智战“剩”|资本加持政策利好,临期特卖站上风口
https://www.toutiao.com/a6974558422607856142/?channel=&source=search_tab

※6 代写商业计划书:万亿临期食品,好特卖商业计划书披露了什么
http://www.searchcool.com.cn/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=25&id=230

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。