Gympassとは?
Gympassとは、企業向けにフィットネスプラットフォームを提供(同社は「企業のウェルビーングを支援する」と定義している)する会社である。具体的には、Gympassアプリに登録することで、提携している世界中のジムを利用できたり、Gympass上に掲載されているヨガ・瞑想・トレーニングなどのオンデマンドレッスンを視聴することができる仕組みだ。2021年5月時点で、2,000社以上のパートナー企業、1,300以上のレッスン、1,000以上のレシピ、数百人以上のパーソナルトレーナーが同サービスで利用できるとされている。また対象エリアは、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパなど14カ国でサービスを提供している。
創業者のCesarは大学の卒業後、マッキンゼーでコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせる。コンサルタントとしての多忙な生活の中で、この世界を股にかけるサービスの種を発見する。それは、Cesarがブラジル中のクライアントとオフィスの行き来のせいで、身体を動かす時間が確保できなかったということだ。彼自身3つのフィットネスジムに同時に会費を支払っていたが、ほとんど使えていなかったという。そこで彼は「どこにいても固定の月会費でジムに通えるようにしよう、そうすれば継続して運動できる」と思い立ち、同社のビジネスは産声を上げた。
今でこそGympassは企業向けの福利厚生サービスとして2,000社以上の顧客企業を有するが、当初はエンドユーザー向けのサービスで、デイリーパスを付与しジムに通ってもらうという仕組みだった。その9ヶ月後には方向性を変え、B2Bモデルへ転換。最初の法人顧客であるPwCは提携開始から3日で500件の会員登録を達成したが、その数字はそれまでにGympassが蓄積してきたB2C顧客基盤を上回るものであった。
その後、他の多国籍企業(ユニリーバやロールスロイス)も利用するようになり、メキシコや南米、ヨーロッパにも進出している。2017年には、人材獲得やイノベーションの観点からアメリカへ拠点を移す。今後はテクノロジーへの投資を加速させ、アメリカだけでも35,000以上のジムとのネットワーク構築や、法人顧客の拡大を狙う。
企業情報
企業名:GPBR Participacoes Ltda
創業年:2012年
創業者: Cesar Carvalho, Joao Barbosa
創業国:ブラジル
従業員数:1,611人(2021年5月時点、LinkedInより)
URL:https://www.gympass.com/jp
サービスの特徴
1.提携先のジムならどこでも通える
出張先のアメリカでA社のジムを利用し、自宅のあるブラジルではB社を利用する、ということも可能だ。
2.リアルタイムデータの閲覧
Gympassの管理画面に企業側がアクセスし、アクティブユーザー数や利用されやすいロケーションなどの情報をチェックすることができる。そのため、人事担当にとっても効果測定がしやすく、プランの変更も柔軟に行える。
3.他のフィットネス系アプリとの連携
メディテーション(瞑想)アプリとして有名なCalmや、栄養管理のNootric、メンタルヘルスのifeel、エクササイズプログラムのSworkitといったサービスと連携し、Gympassユーザーのニーズに幅広く応えることができている。
尚、前提として、企業向けのサービスのため個人で契約するプランは提供されていない。利用のためには企業がGympassと契約している必要があり、契約後は企業IDが付与され、従業員はそのIDを用いてログイン、サービスを利用するという流れである。
ビジネスモデルと収益源
企業向けのプランが2つ用意されている。ウェブサイト上では3つプランが紹介されているが、従業員規模が10人以上の場合はいずれにせよ見積もりが必要なため、実質2つプランとした。
スモールビジネス向け(従業員数10人以下):150USD /月
ミディアムビジネス向け(10人以上):要見積
ラージビジネス向け(1,000人以上):カスタム、要見積
まとめ
確かに、企業側としては複数のジムと福利厚生契約を結ぶより、Gympassと一括で契約を結んでしまった方が効率的なのだろう。
また、新型コロナウイルスの蔓延も、同社が企業の注目を集めた一因かもしれない。都市のロックダウンは在宅ワークの急増をもたらし、従来型のマネジメントでは機能しないケースも増えた。ウイルス蔓延による不安、外出頻度や運動機会の減少による気分の落ち込み等の問題は既に顕在化している。また、リモートワークにより終始監視されている気分になるという声も一部ではあがっている。Gympassを活用することで従業員の健康・幸福に貢献できるなら、利用しない手はないだろう。
筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。