大手物流企業がいくつもの失敗を経て生み出した、無人小売ビジネス

背景市場

中商情報網(ASK CI.com)の記事によると、IoT技術の進歩に伴い”無人ビジネス”の市場が大きく伸長している。例えば、自動販売機・無人店舗・無人商品棚などの無人小売の市場などが挙げられる。民間用無人機械市場規模は
2019年:220億元(3,960億円)
2020年:361億元(6,498億円)
2021年(予測):401億元(7,218億円)と年々増加傾向にある。

★2016-2021年中国民間用無人機械市場規模予測

※中商情報網(ASK CI.com)の記事より抜粋

豊e足食(feng1)とは?

豊e足食(以下feng1)は深圳市豊宜科技有限公司が運営する、無人販売機・商品棚ブランドである。このブランドは中国の大手物流会社”順豊(SF EXPRESS)”がインキュベートしたことで知られている。SoftBank Ventures Asiaもこの企業に投資しており、順豊ホールディングス董事長の王衛に続く大株主となるなど海外の投資家からも熱い視線を注がれている。順豊が小売事業に参入するのはこれが最初ではなく、これまで数々の失敗を経験してきた。2012年には生鮮食品などを扱うECサイト[順豊優選]を開始させ、2014年にはオフラインの小売店舗[嘿客(hei·ke)]をオープンするなど何度も小売業界への参入を試みた。しかし、経営状態の悪化により嘿客(hei·ke)の店舗は次々と閉店。また今日頭条の配信アカウント[財聯社]の記事によると、EC小売を主とするビジネスに至っては2013年から2015年の各年において1.26億元(23億円)/6.14億元(110億円)/8.66億元(155億円)の赤字となり、三年で合計約16億元(288億円)に上る赤字となってしまった。それでも小売業界への参入を諦めない順豊が2017年にインキュベートしたブランドがfeng1である。
無人小売業界の爆発点となったのは2017年。この時期中国全土には約200を超える無人スーパーが登場し、2.5万台の無人商品棚が設定された。無人小売業界の急激な成長の波に乗り、feng1も事業拡大に成功。オフィシャルサイトには全国28の主要都市にサービスを展開しており、無人小売設備の設置台数は5万台を突破、利用者の規模も1,000万人を超えると記載されている。

★feng1オフィシャルサイト

※feng1オフィシャルサイトより抜粋

今日頭条の配信アカウント[快递生態圏趙小敏]の記事には細かな業績が記載されている。
2017年11月:無人商品棚第一号が設置される。
2018年5月:28都市へサービス網を拡大
2018年12月:月間利用ユーザー数100万人突破
2019年11月:無人小売事業が黒字化
2020年5月:総利用者1,000万人突破
2020年11月:無人商品棚の設置数が5万台を突破。そのうちスマート設備が20%を占める。
現在:単月売上が1億元(18億円)を突破。

★feng1 商品棚イメージ

※feng1オフィシャルサイトより抜粋

feng1は今後3年間で20万ヶ所の設置を目標としている。

企業情報

企業名:(中)深圳市豊宜科技有限公司

ブランド名:豊e足食(feng1)

設立:2017年11月

創設者:袁昇彪

資本金:9,600万元(17億2,800万円)

従業員数:非公開

豊e足食(feng1)のビジネスモデル

feng1の主な収入源は無人商品棚で販売される商品の売上である。法人顧客に対しては無人商品棚を無料で提供・取り付け・運用までのサービスを提供する。企業のオフィスがメインのターゲットとなり、今日頭条の配信アカウント[快递生態圏趙小敏]の記事では50,000社に採用されているとされている。

無人商品棚はコンビニのように店員が常駐しているわけではないので人件費などの大幅削減につながる。しかし課題の一つに”商品の補充”が挙げられる。feng1がこの無人小売業界で優位性を発揮する要因にこのブランドをインキュベートした順豊の存在がある。順豊はその物流企業としての強みを活かし迅速に商品が補充できる体制を持っている。

36Kr.comの記事によると設立当初は順豊の配達員が商品補充を担当することで物流企業としての強みを最大限に発揮していた。しかし補充員は通常の配達業務と兼務していたため多くても1人あたり3~5台の商品棚への補充しかできない。これでは台数が多いエリアでは補充が追いつかなくなる。そこでfeng1は新たな制度である”フルタイム店長”の運営モデルを採用し、商品棚を管理する専門の担当者(店長)が商品の補充などを行うことで商品補充などの課題をクリアした。また迅速な商品補充を行うために前置倉庫(小型倉庫)の配置を行った。1エリアの月間GMVが7万~8万元(126万~144万円)に達すると、配達員が兼務で担当している商品棚をフルタイム店長の運営に切り替えるフローになっている。フルタイム店長のモデルの場合1人あたり約30台の商品棚を管理し、約10万元(180万元)の売上獲得が可能となる。

また無人商品棚のリスクとして、商品破損率の高さがある。有人店舗のように店員がいるわけではないので、購入者が自由に商品を出しいれしたりすると、商品が破損するリスクが高まる。feng1もこのリスクに対応するために、商品棚にIT技術を取り入れている。雪豹財経社の記事によると、このスマート商品棚の場合、購入者はまずQRコードの読取りまたは顔認証を行うことで棚を開けることができる、商品を取り出したあと棚を閉じると即決済される仕組みだ。この設備での商品破損率は5%程度に抑えることが可能となる。

サービス詳細

無料商品棚では飲料・インスタント食品・お菓子などが販売されている。
外出してコンビニなどに行くより時間が短縮され、オフィスワーカーには便利なサービスである。

★利用者の様子

※feng1オフィシャルサイトより抜粋

ビジネスモデル

まとめ

順豊は2012年に小売業界に参入したのち、さまざな失敗や挫折を経験し、無人小売事業のfeng1というビジネスにたどり着いた。新型コロナウイルスの出現により”無人ビジネス”へのニーズはますます大きくなっていくだろう。
中国でこのような新しいビジネスが生まれる背景には”進化圧”があると思う。テクノロジーの進歩などにより環境が大きく変化し従来のビジネス・やり方では市場から淘汰されてしまう。世界がより良い方向へ向かうために進化することもあれば、環境の変化に対応し生き抜くために進化圧がかかることで新たなビジネスやイノベーションが生まれることもある。まるで生物が環境に順応するために進化してきたように、ビジネスも進化していくのだろう。

参考記事

※豊e足食(feng1)オフィシャルサイト
https://www.feng1.com/
※2021年中国无人经济产业链上中下游市场剖析(附产业链全景图)
https://www.askci.com/news/chanye/20210727/1529381532789.shtml
※商业梦重燃?顺丰旗下丰e足食获3亿元融资 无人零售还有多少可能?
https://www.toutiao.com/a7063324988874801703/?channel=&source=search_tab
※丰e足食获3亿融资,无人零售真能向死而生?
https://www.toutiao.com/a7064496317179052580/?channel=&source=search_tab
※36氪独家 | 无人零售品牌「丰e足食」完成3亿元A轮融资,加速规模化发展
https://www.36kr.com/p/1603292421573122
※顺丰零售之心不死 无人零售品牌“丰e足食”完成3亿元A轮融资
https://www.cls.cn/detail/930236
※顺丰“丰e足食”完成A轮融资 布局无人零售终端超5万台
https://www.toutiao.com/a7044357108954923558/?channel=&source=search_tab
※“丰e足食”获3亿元融资 无人零售能否重回风口?
https://www.toutiao.com/a7062651524958274052/?channel=&source=search_tab
※资本永不眠|顺丰的“丰e足食”完成融资,软银成为二股东,中金 深国资入局
https://www.toutiao.com/a7044194637304562213/?channel=&source=search_tab
※死磕12年,顺丰零售穿越“死亡谷”
https://www.speed-daily.com/news.html#1413

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。