【死をデザインする】英国最大のオンライン遺言書サービス Farewill

企業紹介

企業名:Farewill
起業年:2015年
創業者 : Tom Rogers, Dan Garrett 
従業員数:80- 
企業URL: https://farewill.com/

Farewillとは

数年前、日本では「終活」という言葉が流行した。
高齢者が死後に向けた準備することだ。
ポジティブに言い換えれば、
今をより良く生きる為の活動とも言える。

この「終活」という言葉をきっかけに、人々が「死」について、家族や親戚間で徐々に話すようになってきたが、日本では文化的な側面から、不謹慎と思われ、あまり多くを語らない。

2015年にイギリスで起業した「Farewill」のCEOである Dan Garret氏は、
ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのグローバルイノベーションデザインプログラムの一環として、日本の高齢者施設で時を過ごした。

そこは、多くの「死」で囲まれた環境であった一方で、人々が死について、向き合う文化や習慣はほとんど感じられなかったという。

つまり、「死」は誰にとっても関りがあることであるが、誰も喋りたがらないことであることを学んだ。

イギリスに帰国したGarret氏は、まずは自分が死と向き合おうと、15回の葬儀を運営を実施し、遺言書作成の資格も取得したという。その経験から、ビクトリア朝から形成された時代遅れの葬儀や遺言書の作成方法に疑問を抱いた。

また、過去10年間でイギリスの葬儀の価格は約2倍に跳ね上がり、12.5%の家庭は葬儀費用の為に借金するほど、隠れた社会問題になっていることも発見した。

これらの問題を解決すべく、Garret氏は21世紀における、テクノロジーを活用した新しいビジネスモデルを創り出すために、オンライン遺言・葬儀サービスの「Farewill」を立ち上げた。

 

サービス特徴

主なサービスは3つ。遺言書作成、プロベート、火葬サービスをオンラインで展開する。
全てに共通することは、より簡単で、わかりやすく、値段が安いことだ。


出典: ※同社のウェブサイト記載の写真を参考に筆者作成

①遺言書作成サービス

Farewillの遺言サービスは、従来のイギリスの平均サービス価格よりも半額低い€90(11,500円)から提供する。遺言作成希望者は、Farewillのサイトより、15分程度で完結する遺言作成のための質問に回答。
その情報に基づいて、ユーザーが記入すべき書類が専用のページに表示される。


出典: ※同社のウェブサイト記載の写真を参考に筆者作成

全ての書類を記入した後、遺言書が作成され、Farewillの担当者が5日以内で添削。法的な問題の有無を確認した後に、依頼者が署名して、遺言書が完成する。

また、電話やチャットでもサポートを受けることが可能である。

②プロベート
プロベートとは、裁判所の管理の元に行われる海外財産の遺産相続や分割の法律手続きだ。
非常に時間がかかり、専門的な知識を要する為、できれば避けたいものである。

Farewillは、この手間のかかる作業を、電話で支援する仕組みを整え、サービスは€595(約76,000円)から提供する。イギリスの平均的な価格は€2000(254,000円)である。

依頼者は同社ウェブサイトから、電話サポート依頼を申請する。電話でFarewillに現状を話すことによって、どのような対応をすべきか、費用がどのくらいかかるのか、概要を知ることができる。


その後、Farewillの担当者が社内で情報をまとめ、依頼者に電話をかけなおして、具体的な詳細について説明する。 最後に、弁護士や政府の認証を得て、依頼者のもとへ証明書が発送される。


③火葬サービス
昨今、コロナ禍において、様々な事情でご家族が葬儀を執り行うことができないケースが増えているという。そこで、Farewillは諸手続きの代行、ご遺体の引き取り、火葬や散骨などを代行する。

€980(約125,000円) からサービスを受けることができ、一般的な相場と比較して、約1/5の価格で提供する。 

最後に

最愛のパートナーや家族が亡くなってしまったとき、ほとんどの人が地元や移住地域で
葬儀屋を探すであろう。この業界は、唯一テクノロジーが入っていない領域であり、書類手続きも複雑で、価格が不透明であるため、だれもより良い方法を探そうとしない。

そこに目をつけたGarret氏は、「死の産業」に足を踏み込んだ。その結果、新型コロナウイルスの感染がパンデミックに至ってから、わずか一週間ほどで、Farewillは約8倍の遺言書を作成するだけでなく、多くの人々から感謝のメッセージをもらうという。

人の目を気にするのではなく、自分自身が「世の中にとって良い」と思えば、Garret氏のように行動することが「多くの人によりよい未来」を与えるであろう。