共働き家庭の力強い味方、顧客のニーズに合わせた託児サービス[FAMIC]

背景市場

iiMedia Researchのレポート[2019~2020年中国嬰幼児托育産業発展白皮書(2019年~2020年中国乳幼児託児産業白書)]によると、2019年時点で中国の0~3歳児の人口は約5,000万人、48%の保護者が託児サービスの利用を望んでいるとされ、託児サービスへのニーズの高さがうかがえる。またOECDの2016年のレポートでは加盟国の平均託児所利用率が33.2%であるのに対して、中国ではわずか4.3%と平均を大きく下回る結果となっている。政府もこの問題を重視し取り組みを強化している。2020年12月には国務院が介護・育児に関して制度の整備や政策を打ち出すことを公式文書として発表している。託児サービスに対するニーズの高まりや政府の後押しもあり、様々な託児関連ビジネスが誕生している。中国で託児サービスに参入する日系企業も現れ、中国系・外資系問わず競争が激化している。中国では2016年に1979年から導入された[一人っ子政策]を撤廃し、第二子の出産を認めた。2021年5月31日には3人目の出産まで認める方針を示しており、今後ますます大きな市場になることが予想される。
同社のレポート[2021年3-4月中国母嬰行業月度運行数據監測報告(2021年3-4月中国ベビー&マタニティ業界月次観測データ)]によると、託児サービスの市場規模は
2019年:1,728億元(2兆9,376億円)
2020年:612.8億元(1兆417億円)
2021年(予測):1,739億元(2兆9,563億円)
となっており、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け市場全体が落ち込んだものの、2021年は2019年と同水準まで持ち直すと予測されている。

★2019年0~3歳の乳幼児の人口は5,000万人を突破

※[2019~2020年中国嬰幼児托育産業発展白皮書(2019年~2020年中国乳幼児託児産業白書)]より抜粋

★OECD加盟国の託児所の利用率

※[2019~2020年中国嬰幼児托育産業発展白皮書(2019年~2020年中国乳幼児託児産業白書)]より抜粋

★2021年中国の乳幼児託児サービス市場規模

※[2021年3-4月中国母嬰行業月度運行数據監測報告(2021年3-4月中国ベビー&マタニティ業界月次観測データ)]より抜粋

FAMIC放我家とは

FAMIC放我家(※以下FAMIC)は広州梵美家教育科技有限公司が運営するプラットフォームであり、託児所と消費者をつなぐプラットフォームサービスを展開している。FAMICの創業者メンバーである林少慧は、FAMICを起業するまで育児関連とは関連のない消費財メーカーで働いていた。P&GでOLAYやSK-Ⅱなどのブランドマネージャーという花形のポジションで活躍していた彼女もまた一人の母親として、託児サービスを必要としていた。国内外の託児サービス、研究論文について研究し、身近な友達などへ託児サービスへのニーズをヒアリングすることで、FAMICを起業するに至った。オーストラリアのNSW FDCA(Family Day Care Australia)の託児基準を取り入れ、自宅チャイルドケアやプリスクール開設の支援を行うアメリカのスタートアップWonderschoolの運営モデルを参考にFAMICの運営モデルを構築していった。[Consumer is Boss(消費者こそが私たちのボス)]、消費者のニーズを徹底的に理解しようとする姿勢がいかにもP&G出身者らしい。
36Kr.comの記事によると2017年にプロジェクトを発足させてから現在まで、FAMICは中国全土13の都市に50以上の託児拠点を構え、2,000名以上の保育士と1万人以上のユーザーを抱えるまでに成長した。2021年内には託児拠点を100まで伸ばす計画だ。

★FAMIC放我家オフィシャル微博

※FAMIC放我家オフィシャル微博より抜粋

企業情報

企業名:(中)広州梵美家教育科技有限公司

ブランド名:FAMIC放我家

設立:2018年9月

創設者:林少慧

資本金:108万元(1,836万円)

従業員数:非公開

FAMIC放我家のビジネスモデルと収入源

FAMICのビジネスモデルは託児所とユーザーをつなぐ、プラットフォームビジネスである。
主な収入源はフランチャイズオーナーからのサービス費用である。
FAMICは自社で託児所を運営しているわけではない。全ては発起人と言われるフランチャイズオーナーとのフランチャイズ契約で託児所を全国展開している。
FAMICは託児所のオーナーをフランチャイズオーナーとは言わずあえて発起人(スポンサー)と呼んでいる。FAMICにとっては託児所のオーナーも顧客、ユーザーも顧客と位置づけており、
FAMICは自社プラットフォームをC2Cプラットフォームと考えている。しかし本記事の中ではあえてフランチャイズオーナーと呼ぶことにする。

筆者はFAMICへフランチャイズ条件などについてヒアリングを行い、フランチャイズ加盟に必要な投資金額の資料を入手した。
準備資金として必要な金額は、
1.託児所の改装費用など:10~30万元(170~510万円)
こちらは一回きりの費用発生となる。

2.FAMICへ支払うサービス費用:6.8~20万元/園(115~340万円)
こちらは年間で支払うサービス費用となり、FAMICの大きな収入源となる。
金額に開きがある理由としては、FAMICから運営に関してどこまでの支援を受けるかによって金額が変動するため。

投資回収にかかる時間は最短で18ヶ月、利益率は20-35%となっている。

FAMICはファミリー型託児所(託児所としての専門施設ではなく、一般的なマンションの1室などを改装し託児所とする少人数型の託児所)と呼ばれ、フランチャイズのオーナーは主に3つに分類される。
①自身も子育てをする母親
②幼児教育分野で経験がある人
③すでに託児関係のビジネスを行っている企業
その中でもFAMICは[①自身も子育てをする母親]のサポートに注力している。女性は出産を機に子育てのために自身のキャリアをチェンジしたり、時には諦めたりすることもある。また子育てにおいて直面する様々な悩みなど、母親であるから分かることがある。そのような人がFAMICのフランチャイズオーナーとなることで、同じような悩みを抱えている家庭を救うことができる。母親が母親を助ける、FAMICは単なるビジネスではなく社会課題の解決にも貢献している。

★託児所の一例

※FAMIC放我家オフィシャル微博より抜粋

託児所開設に必要な手続きや立地条件などは、FAMICのオフィシャルSNSやフランチャイズ資料で言及されている。
【フランチャイズ加盟までの流れ】
①フランチャイズ加盟希望者が保有している物件に対する市場調査
付近の状況(集客力など)を調査することで、託児所として経営が成り立つかなどを分析。
物件に対する要求としては、
・200平米~300平米の室内面積※各省や直轄市で基準が異なる
・3階以下
・独立した屋外スペースがあること
・付近に危険物を取り扱う工場などがないこと
・マンションの入居率が70%を超えている
・付近に幼稚園や託児機関があること 
など非常に細かい基準を設定している。

②託児所の内装デザイン及び備品の調達

③内装デザインに基づいた内装工事

④保育士の募集及び研修

⑤FAMICの監督者による最終確認

⑥園児募集及びテスト運営開始

【FAMIC側のサポート】
FAMIC側がフランチャイズオーナーに対して行うサポートは、
①宣伝物資の提供
②保育士の研修ならびに派遣
③備品(玩具や絵本など)の調達及び供給
④託児所の内装デザイン
などがある。

その他の収入源としては、
1.託児所ではなく自宅へ保育士を派遣する託児サービス
2.物販
などがあるが、FAMICの事業の軸はフランチャイズオーナーによる託児所とユーザーをつなげるビジネスにある。

FAMICとしては、あくまでプラットフォーマーであることにこだわりを持っている。何よりデータを重視しており、ユーザーから得られる情報、託児所側から得られる情報を最大限活用することで、より良い託児サービスの提供とユーザーの満足度を上げることに注力している。

サービス詳細

FAMICの託児所サービスはWechatのミニプログラムから利用することができる。

★ミニプログラムトップページ

※FAMIC Wechatミニプログラムより抜粋

下記に費用の一例を紹介する。
1.託児所訪問:託児所の様子などを知ることができる。
費用:9.8元(132円)


※FAMIC Wechatミニプログラムより抜粋

2.体験入園:3日間の体験入園
費用:299元(5,083円)


※FAMIC Wechatミニプログラムより抜粋

3.正式入園:1年契約の場合
[内容]
保育時間:全日保育
乳幼児の年齢:18ヶ月以上
費用:55,056元(935,952円)※月換算:77,996円/月

ビジネスモデル

まとめ

一人っ子政策を廃止したことで、今後2人目、3人目の子供を出産する家庭も増えてくるだろう。そうなるとますます託児サービスへのニーズが高まってくることは容易に想像できる。FAMICはもちろん時勢の流れに上手くのってビジネスを成長させているが、彼らの最大の特徴は[母親が母親]を助けるという点にある。創業者の林少慧にとってフランチャイズオーナーの母親はサプライヤーであると同時に消費者[BOSS]なのだ。BOSSとBOSSをつなげることで、社会課題を解決する。これがFAMICの最大の存在意義と言えるのではないだろうか。

参考記事

※1艾媒报告| 2019~2020年中国婴幼儿托育产业发展白皮书
https://www.iimedia.cn/c400/66886.html
※2艾媒咨询|2021年3-4月中国母婴行业月度运行数据监测报告
https://www.iimedia.cn/c400/79066.html
※336Kr.com 定位家庭托育界的“贝壳”,「FAMIC放我家」完成数百万元天使轮融资
https://www.36kr.com/p/1361633203258498
※4[今日头条_FAMIC放我家]引入澳洲体系,一年孵化36家托育园,FAMIC全国率先推出家庭式共享托育新模式 
https://www.sohu.com/a/426677303_120010435/
※5FAMICオフィシャル微博
https://weibo.com/u/6861144116?refer_flag=1001030103_
※6 腾讯视频:成为FAMIC发起人之前, 你可能需要了解这些
https://v.qq.com/x/page/o08111aaxtd.html

筆者

Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。