ITの発達により、Eコマース市場は年々拡大し、世界中で競争が激化している。さらには、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、店舗を構える企業は、固定費を削減するために、撤退を余儀なくされる。将来、売上を拡大し、事業を存続させていくためには、Eコマースでの新たな収益モデル作り、マーケティングで差別化を図るしかないだろう。
2010年にアメリカで創業したFabFitFunは、ファッション、美容品、健康用品、家庭用品、電子機器などあらゆるライフスタイルに関するコンテンツや商品を女性をターゲットに提供するEコマース企業だ。Brouhkim兄弟とKitchens氏の3人によって設立されたFabFitFunだが、最初の事業はライフスタイルに特化したウェブメディア。
同年に創業したコスメやスキンケア商品のサブスクリプションビジネスの先駆者であるBIRCH BOX(バーチボックス)が飛躍したことをきっかけに、FabFitFunも素早くサブスクモデルを取り入れた。他にも競合が多かったが、特定の顧客層や商品にこだわらず、ライフスタイル関連全般の商品を取り扱ったことが功を奏した。
また、立ち上げ初期に、200万人以上のフォロワーをもつインフルエンサーGiuliana Rancicとパートナーシップを組んだことや、ブランドメーカーと契約して、積極的にマーケティングを行ったことが、約150万人以上の会員とUS$300 million (約310億円)を売り上げる巨大なライフスタイルEコマース会社へと育てた。最近では、積極的に財務•会計部門の雇用を拡大していることもあり、上場を視野にいれているようだ。ライフスタイル分野において、NetflixやSpotifyのように、人々にとってなくてはならない存在になりたいと意気込む。
企業情報
- 企業名:FabFitFun
- 起業年:2010年
- 創業者: Daniel Broukhim. Katie Rosen Kitchens. Michael Broukhim
- 従業員数: 500 –
- 企業URL:https://fabfitfun.com
サービス内容と特徴
FabFitFunの主な収益は、福袋を彷彿とさせるサブスクリプションボックスだ。同社が選定した8-10個のライフスタイル関連商品がお洒落な箱に内包され、3ヶ月毎に配送される仕組み。商品は有名、新興、オリジナルのブランドがあり、US$200(約20,700円)相当の価値を提供。
会員の年齢やライフスタイルによって、好みの商品は異なるが、アンケートなどを行なって、それぞれに合った商品選別をすることもあるという。
ボックスを受け取るまで何が入っているかわからないドキドキ感や商品を通して日常生活で新しい気づきを得れることが購読者を中毒にさせる。
出典:※同社のウェブサイト記載の写真を参考に筆者作成
サブスクリプションサービスを購読したメンバー会員は、商品ボックスを受け取ることだけでなく、他のサービスを享受することができる。
例えば、FabFitFun TVでは、料理、運動、DIYなどのライフスタイルに関連した情報を放送する。サブスクリプションボックスに含まれている商品の成り立ちや素材などのストーリーを伝え、視聴者からの共感や感動を得ることで、ファンを増やしていく狙い。TVの効果によって、顧客はボックスだけでなく、別途商品を単品で購入することもあるようだ。
また、ニュースレターやSNSを通しても、ライフスタイルに関する有益な情報を届ける。同社の強みはメディア事業で培った「ストーリーを伝える力」と「メンバー会員のコミュニティ」であるため、各商品メーカーはマーケティングの手段として、FabFitFunと提携することが多い。ブランドメーカーが、ロイヤリティを支払って、FabFitFunに宣伝をしてもらうこともある。まるで、ジャパネットたかたのようだ。
また、会員同士が繋がり、情報交換をすることや、最大70%オフのセールに参加できることは会員にとって大きな魅力だ。
*2020年の冬季ボックスの紹介Youtube動画
最後に
サブスクリプションビジネスは、一定数の会員を獲得できれば、キャッシュフローを改善し、安定的な収益を生みだすことができる。一方で、容易に解約することができるため、購読者がサービスに飽きると、ブランド力が弱体化する可能性がある。
そうなると、ポイントはいかに「顧客を楽しませるか」である。会員数2億人を突破したNetflixは、2021年は毎週オリジナルコンテンツを配信すると発表しているほど、飽きさせない工夫を施す。
日本の企業においても、ただ単にサブスクリプションビジネスモデルを取り入れるだけでなく、盤石なコミュニティ作りと創造的な付加価値に期待したい。