コアコンピタンス経営とは?
コアコンピタンス(core competence)とは直訳すると「核となる(core)能力(competence)」を意味し、”企業の核となる能力”を活かした経営手法を”コアコンピタンス経営”と呼ぶ。この概念はゲイリー・ハメルとC.K. プラハラードによって提唱された。企業の核となる能力とはいわゆる”自社の強み”と言い換えることができる。他社には真似できない技術・サービスなどを活かすことで市場での競争力を高めることができるという考え方である。
コンピタンスに必要な5つのポイント
自社のコアコンピタンスを見極める上で重要な5つのポイントを紹介したい。
①模倣可能性(Imitability)
模倣可能性とは”簡単に真似できるかどうか”を意味する。仮に自社で最初に開発した技術やサービスであっても、他社に簡単に模倣されるようなものであってはすぐに競争力を失ってしまう。模倣可能性が低いものであれば市場で持続的に競争力を発揮することができ、企業の安定的な経営に大きく貢献する。
②移動可能性(Transferability)
他社には真似できない技術を開発したとしても、それがごく一部の限られた分野にしか使用することができなければ事業拡大の余地は限定的なものとなってしまう。独自性の高いものをいくつも開発することは容易なことではない。よって技術やサービスの汎用性が高ければ高いほど、複数の市場で競争力を発揮することができる。これを移動可能性(Transferability)と呼ぶ。
③代替可能性(Substitutability)
真似されない・汎用性も高い技術やサービスを開発しても、それにあぐらをかいていてはいけない。真似はできないが別のものに”置き換えられる”リスクがある。これを代替可能性と呼ぶ。仮に代替のものにより生み出される商品やサービスが従来のものと比べコストが低くなったり、より良質なものを顧客へ届けることが可能となれば市場での優位性が一気に逆転されてしまう。他のものに置き換えられないという点が非常に重要となる。
④希少性(Scarcity)
希少性はその名の通り自社の技術やサービスが市場において非常に”珍しいもの”であることを意味する。または市場にあまり出回っていないものであるという見方もできる。希少性の高いものは市場の”主流”でなかったとしても、他社が手を出していないという点においては特定の分野で確固たる地位を築くことができる。また、何かのきっかけでその希少性に注目が集まり市場でのニーズが一気に高まることで、”主流”へとのし上がるポテンシャルも秘めている。
⑤耐久性(Durability)
モノがすぐ壊れる・長持ちするなどと同じように、技術やサービスがその市場で長期的に優位性を発揮できるかどうかを耐久性と呼ぶ。独自のものであってもすぐにニーズがなくなる”一発屋”のようなものであっては、企業を安定的かつ持続的に経営していくことは難しい。
これらの5つのポイントはまとめると、最強のコアコンピタンスとは「他社から真似されない、持続的かつ汎用性の高い技術やサービスで顧客に利益をもたらす能力」といえる。
現代社会においてコアコンピタンスはどこまで有効か?
確かに上記のようなコアコンピタンスを見つけることができれば理想的であるが、昨今の社会を見てみると様々な技術革新がいたるところで起こり新しい技術やサービスが次々に登場する。市場で長期的に競争力を発揮することは難しくなってきている。また、真似されない・置き換えられないものを開発するのも難しくなっている。
よって現代ではコアコンピタンスだけを追求して企業を経営することは難しく、いくつかの経営手法をかけ合わせて”自社の強み”としていくことが必要となる。
”ケイパビリティ”と”コアコンピタンス”の違い
コアコンピタンスと混同されがちなのが”ケイパビリティ”。ビジネスの場面でケイパビリティという場合は、「企業全体の組織力」や「組織固有の強み」という意味合いが強い。コアコンピタンスが”技術やサービス”という顧客に対して生み出す価値に対して、ケイパビリティはその価値を生み出すための”組織の能力”といえる。
例えば、同様の商品であってもA社は半年かかって開発するのに対して、B社はわずか3ヶ月で開発することができる。これはB社の社員のスキルや社内の業務推進の力がA社に対して高い、つまり「ケイパビリティが高い」といえる。
コアコンピタンスの事例
日本企業が独自に持つ技術などは企業のホームページなどで確認することができる。
■FUJIFILM
カメラやフィルムで有名な企業だが、現在では多くの分野で研究開発が行われている。
粒子形成技術、機能性分子技術、ナノ分散技術など多岐にわたる。独自のナノテクノロジーやコラーゲン研究から開発をしたスキンケアブランド「アスタリフト」など、カメラ関連事業以外でも実績を作っている。
■トヨタ
自動車メーカーのトヨタはその技術力はもちろんのこと、「自働化」や「ジャスト・イン・タイム」など徹底的に無駄を省いた”生産方式”自体が企業のコアコンピタンスといえる。
■SHARP
液晶技術やプラズマクラスター技術など有名な独自技術をもっている。
参考記事
※トヨタ生産方式
https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/production-system/#:~:text=%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E7%95%B0%E5%B8%B8,%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E7%A2%BA%E7%AB%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
※FUJIFILM:先進・独自の技術力
https://www.fujifilm.com/jp/ja/about/rd/technology
※SHARP:技術情報
https://corporate.jp.sharp/techinfo/index.html
筆者
Fukushima Gaku
大学卒業後、中国北京へ留学。
留学先では中国語アナウンサー技術を学習。
広告代理店、リサーチ企業などを経て、現在は消費財メーカーにて中国ビジネスに従事している。