オンライン完結型薬局、Alto Pharmacy

Alto Pharmacyとは?

Alto Pharmacyとは?

Alto Pharmacyとは、処方薬をより手軽に・求めやすい価格で提供することで、人々の健康を促進することを目指す会社だ。

従来であれば自ら薬局に出向き薬を受け取っていたが、Altoのユーザーは電話やアプリで薬剤師と相談しながら、処方薬を自宅やオフィスで早ければ即日受け取ることができる。このように、従来型とは一線を画すユニークなモデルをもつAltoは、自分たちのことを「遠隔の薬局」とうたっている。

市場規模としては5000億ドルにも上るとされるこの市場は、長い間大きな変革を経験してこなかった。そこで、創業者のひとりであるGamache-Asselinは、薬局の従来の慣習に目をつけ、これだけ情報化が進んだ社会で「未だに人々は薬局に処方箋を取りに行っており、誰もが嫌がる体験」とし改善を図った。まず着手したのは、サンフランシスコのベイエリアにある小さな薬局の買収だ。まず業界を理解することを試みたのである。結果としてGamache-Asselinは、「薬局が運営面で如何に小売業とは異なっているか」を理解することとなる。そこからデジタルプラットフォームを立ち上げ、現在ではサンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトルなどアメリカの主要5都市でサービスを展開している。

Altoのこの新しい試みは投資家からも注目を集めている。2015年に創業した同社だが、2020年時点で総額2億5000万ドルにも上る大きな資金調達ラウンドを迎え、その大部分はソフトバンクによって拠出されたという。これにより、創業以来の資金調達総額は3億5000万ドルを超えることとなった。

企業情報

企業名:Alto Pharmacy

創業年:2015年

創業者:Mattieu Gamache-Asselin, Jamie Karraker

創業国:アメリカ合衆国

従業員数:586人(2021年4月時点、LinkedInより)

企業URL:https://alto.com/

サービスの特徴

1.アプリ上で全て完結

 まず、Alto利用の流れはこうだ。

  •  処方箋をAltoへ送る。自身で既に処方箋を持っている場合はアプリ・ウェブ上でAltoへ送信するものと見られる。医者からAltoへ直接送ることも可能だ。
  • 薬の価格をAltoで比較し、自分にとって手頃な薬を検索することができる。ほとんどの薬が、主要な保険の適用範囲内となっている。ある調査によると、Alttoを利用した41%以上の患者が薬代を節約できたとのこと。
  • 薬を自宅やオフィスで受け取ることができる

 Altoのおかげで、薬局まで出向く必要もなく、長い間待たされる経験ともおさらば、ということだ。

2.送料無料で処方薬を手に入れることができる

 配達日や時間指定をすることでオフィス・自宅など好きな場所に配達してくれるだけでなく、それが無料で、しかも即日配達も可能だ。

3.医者側の業務も効率化

 Alto自体がクラウド薬局のようなものであるため、医者の手間を煩わせることなく患者へ薬を供給することができる。また、ある調査結果によると、患者が規定通りに服薬することを意味する服薬コンプライアンスの割合が、Altoを利用した場合は71%を記録したという。これは業界平均よりも42%も優れている。医師や薬剤師が服薬に関して定期的に確認するよりも、Altoを使った方がきっちり服薬するということになる。

ビジネスモデルと収益源

従来通り、患者への売値と製薬会社からの仕入れ値による差分で収益を得ているとみられる。

Alto Pharmacyビジネスモデル図解

まとめ

伝統的な産業が変革するきっかけを与えたAlto。奇しくもコロナ禍により、医療全体への注目度が高まっているだけでなく、対面を避けるという新しいスタンダードも追い風となっているだろう。それだけではない。日本のような高齢化社会では、高齢者が頻繁に薬局へ出向くことも困難だろう。特に過疎化が進んだ地域では、このような問題は既に顕在化している。遠隔処方への対応だけでなく配達体制の整備も急務だ。

 

筆者
財前 ワタル。Business Earthライター。経営コンサルティング会社でコンサルタント、リサーチャーを担当した後、拠点を北米に移し、広告代理店に勤務。現在は再度日本に拠点を移し、フリーランスとして広告運用、市場調査(主に北米)、記事執筆を生業とする。